脳と心の再生カンファレンス

病院でもらう薬でも 身近な薬物依存

工藤千秋・くどうちあき脳神経外科クリニック院長
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 著名な芸能人が覚醒剤や合成麻薬MDMAなどの違法薬物の使用で逮捕される事件が相次いで報道され、社会的な注目を集めています。一般の人の多くはこうした報道を「対岸の火事」のような感覚で眺めているかもしれませんが、身近なところでも薬物依存は起きています。近年、専門家の指摘で懸念されるようになってきたのが、違法な薬物ではなく、医療機関で処方される合法の薬で起きる依存の問題です。今回はこうした合法薬物依存についてお話しします。

 ベンゾジアゼピン受容体作動薬と呼ばれる薬をご存じでしょうか? べンゾジアゼピン受容体作動薬に分類される薬は日本国内では30種類以上ありますが、代表的な製品はデパス(一般名・エチゾラム)、リーゼ(一般名・クロチアゼパム)などです。中には名前を聞いたことがある人もいるでしょう。

 ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、神経細胞の間で情報の伝達を行う神経伝達物質の一種であるGABA(ギャバ)、正式名称はγ(ガンマ)アミノ酪酸に作用する薬です。「ストレス緩和」などをキャッチコピーにした健康食品やサプリメントでGABAの名前を見かけたことがあるかもしれません。GABAは神経細胞に「興奮を抑えよ」という情報を伝えています。ベンゾジアゼピン受容体作動薬はこのGABAの働きを強めて興奮を抑…

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工藤千秋

くどうちあき脳神経外科クリニック院長

くどう・ちあき 1958年長野県下諏訪町生まれ。英国バーミンガム大学、労働福祉事業団東京労災病院脳神経外科、鹿児島市立病院脳疾患救命救急センターなどで脳神経外科を学ぶ。89年、東京労災病院脳神経外科に勤務。同科副部長を務める。01年、東京都大田区に「くどうちあき脳神経外科クリニック」を開院。脳神経外科専門医であるとともに、認知症、高次脳機能障害、パーキンソン病、痛みの治療に情熱を傾け、心に迫る医療を施すことを信条とする。 漢方薬処方にも精通し、日本アロマセラピー学会認定医でもある。著書に「エビデンスに基づく認知症 補完療法へのアプローチ」(ぱーそん書房)、「サプリが命を躍動させるとき あきらめない!その頭痛とかくれ貧血」(文芸社)、「脳神経外科医が教える病気にならない神経クリーニング」(サンマーク出版)など。