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うつ病で起きる物忘れ「認知症の薬は効きません」

小田陽彦・ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長
物忘れ予防のため体操をする有料老人ホーム利用者ら=群馬県高崎市内で2010年12月11日午前11時17分、鳥井真平撮影(写真と本文は関係ありません)
物忘れ予防のため体操をする有料老人ホーム利用者ら=群馬県高崎市内で2010年12月11日午前11時17分、鳥井真平撮影(写真と本文は関係ありません)

 精神疾患のうちの一つである「うつ病」になると、考える速度が遅くなり、一つの物事に意識を集中し続けるのが困難になります。また、自覚症状として物忘れを感じることがありますので、認知症と間違われることがあります。これを「偽性認知症」といいます。本人が訴える物忘れを治療するのなら、原因がうつ病でも認知症でも同じだろう、と思う方もいらっしゃるでしょうが、そういうわけにはいきません。本当はうつ病なのに認知症として治療を受けたがために、かえって経過が悪くなることがあるので、うつ病と認知症の区別は重要です。

 そこで、うつ病と認知症の違いを簡単に説明しておきましょう。うつ病は1年以上続くことは少なく、その80~90%は特別な治療をしなくとも2年以内に回復します。一方、多くの認知症疾患は短期間に回復することはありません。また、うつ病の人は気分の落ち込みや何をしても楽しくないという「意欲低下」が必発ですが、認知症疾患の場合は、それらがある場合もあればない場合もあります。

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ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長

おだ・はるひこ 1977年、兵庫県西宮市出身。兵庫県立ひょうごこころの医療センター精神科医師。神戸大学医学部卒。医学博士。神戸大学医学部精神科助教、兵庫県立姫路循環器病センター等を経て2017年4月より現職。日本精神神経学会専門医・指導医。日本老年精神医学会専門医・指導医・評議員。著書に「科学的認知症診療」(シーニュ社、2018)