環境と健康の深い関係

農薬の子供への影響調査 EUは重視、日本は無視

遠山千春・東京大学名誉教授(環境保健医学)
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大豆畑で農薬をまく航空機=米国イリノイ州で
大豆畑で農薬をまく航空機=米国イリノイ州で

 殺虫剤の一種に「有機リン系殺虫剤」があります。これは化学兵器(ホスゲン、サリンなど)と類似の化学物質で、農薬として使うために毒性を大幅に弱くしたものです。従って、両者は、ほぼ同じメカニズムで病害虫やヒトを含む哺乳類に作用します。神経が正常に働くために極めて重要な役割を持つ酵素「アセチルコリンエステラーゼ」の働きを妨げるのです。その結果、昆虫は神経障害や呼吸困難などで死亡します。

 有機リン系殺虫剤の使用量は、前の記事で紹介したネオニコチノイド系殺虫剤の開発で大幅に減りました。それでも今も世界中で、かんきつ類やナッツ類、ブドウ、リンゴ、玉ネギなどの栽培で使われ、食品を介して、日常的に体内に取り込まれています。

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遠山千春

東京大学名誉教授(環境保健医学)

とおやま・ちはる 1950年、東京都出身。東京大学医学部保健学科卒、ロチェスター大学大学院修了。筑波大学、北京大学、中国医科大学の客員教授。医学博士、Ph.D。国立公害研究所(現・国立環境研究所)領域長、東京大学医学系研究科疾患生命工学センター教授を経て、2015年4月より「健康環境科学技術 国際コンサルティング(HESTIC)」主幹。世界保健機関、内閣府食品安全委員会、環境省などの専門委員、日本衛生学会理事長、日本毒性学会理事、日本医学会連合理事などを歴任。