医療プレミア特集

新型肺炎 「重症者 早期発見を」専門家の警告

医療プレミア編集部
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クルーズ船(奥)から下船した米国人を乗せて出発するバス=横浜市鶴見区で2020年2月17日、竹内紀臣撮影
クルーズ船(奥)から下船した米国人を乗せて出発するバス=横浜市鶴見区で2020年2月17日、竹内紀臣撮影

 世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長を約10年間務め、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)対策の陣頭指揮を執った尾身茂・地域医療機能推進機構理事長が13日、日本記者クラブで記者会見し、新型コロナウイルスについて、「重症者を早期に発見し、死者を最小限にすることが極めて重要」との認識を示した。会見の要旨は以下の通り。【まとめ くらし医療部・御園生枝里】

 我が国がこれからどういう対策を取るべきか、私見を述べさせてもらう。

 09年の新型インフルエンザでの日本の対応については、いろいろ批判もあったかもしれないが、結果的には人口あたりの死亡率は世界で圧倒的に低かった。09年は大阪と神戸で学童中心に広がった。この時、大阪と神戸がかなり広範囲で学校閉鎖を早期にやってくれた。本来ならずっと(患者は)増えていくが、ここで制圧できた。その後、次のウイルスが別のルートでメキシコあたりからきた。最初の制圧の部分がなければおそらく急激に増えて、日本の死亡率は他の国並みになったと思っている。日本が小さい山を一回制圧したのは、世界の感染症の歴史で唯一だったと思う。日本では報道してくれなかったが、WHOは高く評価している。なぜ日本は09年にうまくいったのか。広範囲な学校閉鎖、医療関係者の努力、一般市民の高い健康意識ーーの三つだと思う。アメリカ(の死亡率)は結構高かった。

 09年新型インフルの専門家諮問委員会の委員長で、提言をまとめた。内容は、①パンデミックの初期には疫学情報が不確定あるいは極めて限られているので、ある程度最悪のシナリオを想定して対策を立てること②情報が明確になり次第、適宜変更③政治家が最終的な判断をする前に、医療関係者、専門家、官僚などが技術的な議論を合理的に行うこと④国と地方自治体の役割分担⑤わかりやすい情報提供ーーだ。

 現在の日本の状況について。武漢での最初の報告が昨年12月。それ以前にも(おそらく)多くの感染者がいて、その後も増加。武漢閉鎖が1月23日。我が国の本格的対策が1月10日で、その時に既に武漢からの感染者が多数、来日していた可能性が高い。実際に1月3日には発症があった。(武漢、湖北省からの)渡航者と、既に発症した渡航者との接触者のみを対象にし、多くの感染者を見落としていた可能性が極めて高い。さらに無症状の病原体保有者、潜伏期間中の人が感染に関与している。報告者数はまだ少ないが、感染が進行している可能性があると判断すべきだ。

 クルーズ船での感染状況をみると、人々が密集した空間で広がりやすいことがわかる。さらに最近のシンガポール、香港の情報では渡航歴のない人から続々と感染がわかっているということだ。

 以上のことから、軽症者を含む感染が少なくとも散発的に拡大している。もう軽症者を含む感染が始まっている。いわゆる感染の早期、拡大期、終息期と分けるが、国内の感染早期とみなすべきだ。

 我が国が取るべき対策には、三つの原則がある。

 一つ目は、初期の対応は迅速かつ、やや強め広めに。最初見落とすと深刻になるので、見落としがないようにする。今の状況で完璧にふさわしい対応をするのは神様しかできない。見えないものを判断するわけだから。ある意味では多少の過剰はやむを得ないという態度でやる。だんだんと分かってきたら、適切に落としていく。

 二つ目は、潜伏期間が長く、軽症例が多い疾患なので、水際作戦による封じ込めが極めて困難。感染拡大が判明すれば、封じ込めから徐々に地域の感染対策へシフトしていくべきだと思う。

 三つ目は、感染の時期。それに応じた対策を取ることが極めて重要だ。

 国内では今、感染早期だと思う。この時期の対策はまず拡大の抑制。次は、重症感染者を早期に発見して、死亡者の数を最小限にすることが極めて重要。そのための医療体制は、感染者は感染症指定病院で対処するが、濃厚接触者にも積極的にウイルス検査を行う。それからもう感染拡大期に備えて、感染症指定病院以外も診療できる体制を準備しておくこと。それから、国と私の考えが違うが、もう肺炎サーベイランス(監視)に移行した方がいいと思う。ウイルス検査も主に肺炎などが疑われる症例に行うことで、国内のキャパシティー(処理能力)を強化するということはある。

 拡大期に移るとどうなるかは、前もって知っておくことが極めて重要。目的は重症感染者の早期発見、死亡者数の減少ということだが、国民生活、経済への影響の最小化も考えたほうがいい。医療体制は、早期と違って、一般の医療機関でも集中治療ができる施設があればそこで行う。軽症者は開業医を含めて、医療機関でフォロー。軽度の人は自宅待機で、濃厚接触者は症状があれば自ら申告。サーベイランスもこの時期になると、いちいち個々の例を追う必要はない。ウイルス検査も同じ。み…

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