医療プレミア特集

新型肺炎 「閉鎖空間が患者集団形成」 専門家会議会見全文

医療プレミア編集部
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新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で発言する安倍晋三首相(右から2人目)。同3人目は加藤勝信厚生労働相=首相官邸で2020年3月1日、丸山博撮影
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で発言する安倍晋三首相(右から2人目)。同3人目は加藤勝信厚生労働相=首相官邸で2020年3月1日、丸山博撮影

 新型コロナウイルスによる感染症対策の政府専門家会議(座長=脇田隆字・国立感染症研究所長)は2日の記者会見で、これまで感染が確認された症例を分析した結果、患者の8割が他の人に感染させていないことを明らかにした。同時に、屋内の閉鎖空間などで1人から複数に感染させていく患者のクラスター(集団)を形成する可能性を指摘。感染者が増加する北海道でのデータを踏まえ「症状が軽い人も、気づかないうちに感染拡大に重要な役割を果たしてしまっていると考えられる」と分析した。会見内容は以下の通り。【くらし医療部・熊谷豪、阿部亮介】

脇田隆字・国立感染症研究所長 前回も見解を示したが徐々に感染者が増えてきています。クラスター対策班の分析に基づき、専門家会議でまとめました。どう現状分析しているか、市民に伝えるのが専門家の責務です。現時点での見解であり、変更がされることはご承知おきください。

尾身茂・地域医療機能推進機構理事長 この見解は、新型コロナウイルス厚生労働省対策本部クラスター対策班が分析した内容に基づき、専門家会議において検討した結果をまとめた見解です。現在までに明らかになってきた情報をもとに、我々がどのように現状を分析し、どのような考えを持っているのかについて、市民に直接お伝えすることが専門家としての責務だと考え、この見解をとりまとめました。なお、この内容はあくまでも現時点の見解であり、随時、変更される可能性があります。

感染者の8割は「感染させていない」

1.この一両日で明らかになったこと

(1)症状の軽い人からの感染拡大

 これまでは症状の軽い人からも感染する可能性があると考えられていましたが、この一両日中に北海道などのデータの分析から明らかになってきたことは、症状の軽い人も、気がつかないうちに、感染拡大に重要な役割を果たしてしまっていると考えられることです。なかでも、若年層は重症化する割合が非常に低く、感染拡大の状況が見えないため、結果として多くの中高年層に感染が及んでいると考えられます。

参院予算委員会で答弁する政府専門家会議座長の脇田隆字国立感染症研究所長=国会内で2020年3月2日午後、川田雅浩撮影
参院予算委員会で答弁する政府専門家会議座長の脇田隆字国立感染症研究所長=国会内で2020年3月2日午後、川田雅浩撮影

(2)一定条件を満たす場所からの感染拡大

 これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。一方で、一定条件を満たす場所において、1人の感染者が複数人に感染させた事例が報告されています。

 具体的には、ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、ジャン荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テント等です。このことから、屋内の閉鎖的な空間で、人と人とが至近距離で、一定時間以上交わることによって、患者のクラスターが発生する可能性が示唆されます。そして、クラスターが次のクラスターを生むことが、感染の急速な拡大を招くと考えられます。

(3)重症化する人について

 これまでにわかってきたデータでは、感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤となっています。しかし、重症化した人も、約半数は回復しています。

 重症化する患者さんも、最初は普通の風邪症状(微熱、咽頭<いんとう>痛、せきなど)から始まっており、その段階では重症化するかどうかの区別がつきにくいです。重症化する患者さんは、普通の風邪症状が出てから約5~7日程度で、症状が急速に悪化し、肺炎に至っています。

奈良県天理市立朝和小の学童保育所では、一部の児童が小学校の教室も利用して過ごした=同小で2020年3月2日午前、廣瀬晃子撮影
奈良県天理市立朝和小の学童保育所では、一部の児童が小学校の教室も利用して過ごした=同小で2020年3月2日午前、廣瀬晃子撮影

北海道「急速に収束も可能」

2.現在の北海道の感染状況

 推定される発症者数は、日ごとに急速に増加していると考えられます。しかし、この1、2週間の間に、人と人との接触を可能な限り控えるなど、積極的な対応を行えば、感染拡大を急速に収束させることが可能です。しかし、そうした対策を実施しないと、急速に北海道全体に感染者が拡大する恐れがあります。

3.なぜこのような感染状況に至っているか

(1)北海道における地域的特徴

 都市部は人口が多く、社会・経済活動の活発な若年層が集中していますが、他の圏域には重症化のおそれのある高齢者が多く住んでいるという特徴があります。また、北海道の6圏域間の人の移動は、都市部と他の圏域との間での流動が多い状況です。

(2)北海道における感染の特徴

 北海道には中国からの旅行者が多く、そうした人々から感染が広がったと考えられます。北海道全体をすべて覆うほどの感染状況にはなっていませんが、北海道全域に感染者が点在している状況です。また、人口比率で考えると、圧倒的に遠隔地で感染者の報告数が多い状況です。

3月8日までの公演を中止するお知らせが掲示された宝塚大劇場=2020年3月2日午後、水津聡子撮影
3月8日までの公演を中止するお知らせが掲示された宝塚大劇場=2020年3月2日午後、水津聡子撮影

(3)現状に至った理由

 都市部においては、社会・経済活動が活発な人々が、感染のリスクが高い場所に多く集まりやすく、気づかないうちに感染していたと考えられます。なかでも、若年層に、症状の軽い人が多いと考えられ、そうした人々の一部の人が他の圏域に移動することで、北海道の複数の地域に感染が拡大し、感染した高齢者のなかから症状が出たことが報告されたことによって、感染の拡大状況がはじめて把握できたと考えられます。

緊急事態宣言「合理的な判断」

4.北海道で実施すべき対策

 北海道では緊急事態宣言が出されましたが、合理的な判断だと思います。北海道の場合は、なんとか1、2週間で(患者数が)急峻(きゅうしゅん)にぐっと増えるのを、三角形で減るようにということが求められます。北海道の関係者が頑張れば、急峻に減らすことが可能です。

 緊急事態宣言でうまくすると、かなり急激に収束する可能性がありますが、残念ながらゼロにはならない。外国からも(感染者は)来ます。しかし、効果が出るのは、ずれがあるので10日間以降。すぐには効果が分からないことだけは認識してほしい。

5.北海道の人ができること

 武漢では、社会機能を停止させることによって感染拡大の収束に向かっていますが、現時点では、日本では社会機能を可能な限り維持しつつ、感染拡大を最大限に抑制することが求められています。そのためには、できる限り多くの人々に、次のような行動をとっていただきたいと考えています。

・軽い風邪症状(喉の痛みだけ、せきだけ、発熱だけなど)でも外出を控えること

・規模の大小に関わらず、風通しの悪い空間で人と人が至近距離で会話する場所やイベントにできるだけ行かないこと(例えば、ライブハウス、カラオケボックス、クラブ、立食パーティー、自宅での大人数での飲み会など)。ぜひ控えてほしい。

 ただし、症状のない方にとって、屋外での活動や、人との接触が少ない活動をすること(例えば、散歩、ジョギング、買い物、美術鑑賞など)、手を伸ばして相手に届かない程度の距離をとって会話をすることなどは、感染のリスクが低い活動です。うまく工夫してください。そうでないと、息が切れちゃいますから。

6.北海道の事業者の方へのお願い

 上述したように、症状が軽く、経済・社会活動が活発な人々を介して、感染が静かに拡大していることが、今回、明らかになってきました。したがって、事業所等における活動も、テレワーク、リモートワーク、オンライン会議など、人と人が接触しない形態を大いに活用してください。出張も最低限に抑制してください。

 ただし、社会機能の維持に関わる事業者や医療機関においては、事業や診療の継続が必要です。国民生活に影響を及ぼさないように、感染防御に十分注意して事業や診療を行ってください。

 最後になりますが、若い層がウイルスの特徴によって、本人たちに責任はないが、気がつかないうちに、結果的に感染させるということがあります。そこで全国の皆さんにお願いしたい。

後列からマスク姿の保護者に見守られながら校歌を斉唱する卒業生=群馬県高崎市東貝沢町の県立高崎商業高校で2020年3月2日、鈴木敦子撮影
後列からマスク姿の保護者に見守られながら校歌を斉唱する卒業生=群馬県高崎市東貝沢町の県立高崎商業高校で2020年3月2日、鈴木敦子撮影

「若年層は人混みを避けて」

7.全国の若者の皆さんへのお願い

 10代、20代、30代の皆さんは、新型コロナウイルス感染による重症化リスクは低いです。でも、このウイルスの特徴のせいで、こうした症状の軽い人が、気がつかないうちに、高齢者など、重症化するリスクの高い人に感染を広めてしまう可能性があります。皆さんが、人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで、多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます。以上が、専門家委員会の共通の見解です。

Q:分析は、いつからいつまで、何症例の分析結果か

西浦博・北海道大教授 2月28日までに確認された国内110例などを分析した。

営業時間の短縮を知らせる博多阪急の張り紙=福岡市博多区で2020年3月2日午後5時58分、久野洋撮影
営業時間の短縮を知らせる博多阪急の張り紙=福岡市博多区で2020年3月2日午後5時58分、久野洋撮影

Q:北海道が中心だが、全国の他の場所でも当てはめられるのか

押谷仁・東北大教授 北海道は一つのモデルケースになる可能性がある。クラスター対策というアプローチ(取り組み方)についてだが、80%は誰にも感染させていない。コントロールが難しいウイルスだが、ここがウイルスの弱点だ。80%が感染させていないということは、クラスターを形成するような大きな、10人、20人規模のクラスターをつぶすと、コントロールできる可能性がある。ただし、北海道は実はいろんなところに感染者が出ている。感染者がどこかで一つのイベントに収束することができるのかを、いろいろ解析すると、一つのイベントに収束できない。かなりの数のクラスターがどこかに存在している蓋然(がいぜん)性が高い。いったん流行のスピードを急速に落とさないと、クラスターへのアプローチができない。

 北海道ではかなり積極的な対策が必要だった。まだ我々は、いろいろな知見を得ている段階なので、どういう段階で積極的な対策をしたらいいか、現時点でこれがベストというものはない。そういう意味で北海道はモデルケースになる可能性がある。

Q:症状の軽い人が感染拡大させた事例はあるか

西浦氏 若い人の間で感染者が何人いるという直接的な推定はできてない。間接的にはある。いままで北海道に旅行歴がある人が、海外で3例、タイとマレーシアで感染と診断されている。(訪れたのは)さっぽろ雪まつりなどだ。日本国内でも、千葉県1例、長野1例、もう1例が熊本。大阪府にも同様に、北海道とリンクがある人がいる。1月の初め、世界各地の研究者が武漢の感染者数の推計をしたが、タイや日本への渡航者のボリュームを利用した。(我々は)同様に札幌について実施し、2月25日の段階で940人が感染しているという推計となった。陽性と診断されているのは71人なので10倍以上のギャップがあり、軽症の人がいないと説明がつかない。今までの知見からというと若年ではないか。

押谷氏 これまでのクラスター形成例では、重症例でない例から感染が起きていると考えないと説明できない。(重症急性呼吸器症候群)SARS(サーズ)ではほとんど重症例から感染した。今回そうではない可能性がある。2次感染が起きた状況をみても、奈良のバス運転手らは誰から感染したか言えていない。重症化した人に接触した記録がない。スポーツジム(での感染者)も、重症化した人が、具合の悪い人がジムに行くとは思えない。状況証拠を見ると、軽い人が感染源になっている蓋然性が高い。

Q:全国の皆さんへのお願いすることとして、「風通しの悪いところを避ける」とあるが、ライブハウスなどか

尾身氏 北海道の人と全国の人は感染の状況が違う。北海道の人は、散歩ぐらいはいい。全国の人は、我々が数日前にここで話したが、正面で腕が届く範囲で一定時間話をするのを避けるとか、そういうことをやっていただきたい。北海道はぐっと(患者数があがって)いく可能性があるので、かなり厳密にやってほしい。(北海道以外の)他の人はメリハリをつけて感染リスクに応じてやってほしい、という趣旨だ。

参院予算委員会で新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大への対応策や検査体制などについて加藤勝信厚生労働相の答弁で質疑が止まり、立憲民主党の蓮舫副代表兼参院幹事長(手前右)らの協議を待つ安倍晋三首相(手前から2人目)と閣僚たち=国会内で2020年3月2日午前、川田雅浩撮影
参院予算委員会で新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大への対応策や検査体制などについて加藤勝信厚生労働相の答弁で質疑が止まり、立憲民主党の蓮舫副代表兼参院幹事長(手前右)らの協議を待つ安倍晋三首相(手前から2人目)と閣僚たち=国会内で2020年3月2日午前、川田雅浩撮影

西浦氏 風通しの悪い場所だが、110人の国内発生の2次感染のパターンで、共通項でいうと、統計学的にも有意なのは、空気のよどみができる屋内の閉鎖環境が共通項だった。それが効果的に(リスク回避)できると予防が成り立つ。若者の具体例だが、学校が休みになって、外出自粛の時もそうだが、友達と会って飲み会するとかカラオケに行くとか空気がよどむ空間で小一時間過ごす。比較的症状が軽いので、風邪の症状があっても無理すれば出かけられるぐらい軽い。同じ時間を過ごすことで伝播(でんぱ)することがなきにしもあらずだ。全国の若い人には、友達同士との接触をしばらく控えるようにという協力をお願いしたい。

Q:(北海道の推計感染者数の)940人の計算の仕方を詳しく教えてほしい。

西浦氏 海外で診断されたタイ、マレーシアの3人の確定患者がいる。北海道のすべての空港から、マレーシアなどの渡航者のボリュームがある。タイ、マレーシアの3人が分子で、渡航者が分母。感染リスクの何%かというのが出るので、北海道全体で940人ぐらい。

Q:武漢からチャーター便で帰った人は2%ぐらいという計算があったが、それと同じか

西浦氏 計算の仕方は同じ。

Q:換気について。接触感染なら関係ないが、環境感染症学会が先週、空気感染と接触感染の中間のような感染が起きているという見解をまとめたが、これによってクラスターが発生しているのか

押谷氏 感染経路について、明確なエビデンスはない。ただし、接触感染、飛沫(ひまつ)感染だけでは説明できないことが、いろいろでてきている。空気感染は遠くに飛沫核、小さな粒子が飛ぶ。これがあるエビデンスはない。たぶんないと思う。ただし、近距離でせき、くしゃみをしていなくても、感染が起きている可能性はある。症状がはっきりしない人、ひどくくしゃみをしている人でないが人から感染が起きていると考えるべき事例が多く出てきている。そういうのと、換気が関係している可能性がある。

自習室で自習をする児童ら=さいたま市浦和区の北浦和小学校で2020年3月2日午前10時18分、鷲頭彰子撮影
自習室で自習をする児童ら=さいたま市浦和区の北浦和小学校で2020年3月2日午前10時18分、鷲頭彰子撮影

Q:効果と反作用のバランスをどう取るかという問題がある。1、2週間後はどうなっているというシナリオは。

尾身氏 皆さんへのお願いがあるが、軽い症状なら外出を控えるとか、ライブハウスに行かないとか。これまでは、そこまで強いところはやってない。感染症対策の経験とかを踏まえると、実行すれば、かなり感染の可能性が高いところをつぶすので、一定の効果があることは間違いない。どれだけシャープかは分からないが、北海道の人が心を一つにしてこれをやれば、一定程度シャープになる。さきほども言ったが、その効果が見えるのは10日ぐらい後。新しい感染は理想的に言えば、緊急事態宣言を出して、かなり強い対応をすれば、その次の日からは感染が起きない。一定期間のインターバルをもって、下がり方の程度はあるが、タイムラグを考慮するとある程度は分かる。

押谷氏 2週間後どうしていくかだが、中国は武漢とその周囲以外ではうまくコントロールできている。かなり社会生活を制限したからだ。日本でそれができるのかといと非常に難しい。日本では社会機能を可能な限り維持しつつ、感染拡大を最大限抑制することが求められている。どこにリスクがあって、どこにリスクがないのか。どこを制限して、どこが大丈夫なのか。例えば、ジョギングは大丈夫で、ほぼリスクはないと思うが、ジョギングをするのに着替えするところに集まるのはリスク。一つ一つの例を提示して、社会機能を損なわない形で最大限の感染拡大を防いでいく。そういう具体例を含めた指針を我々の方で近日中に用意する。

Q:若年層を中心に広がっているのではということだが、政府による休校措置は有効か

脇田氏 今日も国会でも話したが、前回の見解の中で、教育機関においても集会、行事開催を分散するなどできるだけしてほしいとした。学校閉鎖については、インフルエンザでは感染拡大防止に有効だとされている。新型コロナウイルスでは効果は一定の見解はない。ただ、感染者が未成年に少ないことは報告されているが、一方で、軽症なので検知されているのが少ない可能性もある。10代でもそうした行動を取ってほしいと話した。未成年者においても一定の割合で発生する。学校閉鎖が未成年者の間で感染拡大を防ぐことに、一定の効果はあると思う。

Q:北海道とそれ以外で一斉に休校することの意味は

脇田氏 今回全国一斉(の休校要請)は、初めてなので、有効性は今後検証されるべきだろう。

押谷氏 専門会議の合意ではなく私個人の見解だが、2009年の新型インフルエンザでは、学校休校についての指針を出した。インフルエンザは、学校に通う年齢層の子どもが、流行の非常に大きな要因になっている。子どもがかかることで、そこから地域に広がる傾向がある。早期の学校閉鎖がインフルエンザが有効だとある程度のエビデンスで言える。ただし、今回のウイルスがこれまでのエビデンスでは、子どもが非常に大きな、流行を起こしているドライビングフォース(駆動力)になっているエビデンスはない。ただし、未知の未知なので、まったくゼロかというと、現時点では分からない。学校の一斉休校をすることで、西浦先生が言ったように、友達の家にたくさん集まるのは、かなり高いリスクになるので、避けてほしい。

記者会見で「新型コロナウイルス対策連絡会議」設立を発表する日本野球機構(NPB)の斉藤惇コミッショナー(左)とJリーグの村井満チェアマン=東京都内のホテルで2020年3月2日午後、手塚耕一郎撮影
記者会見で「新型コロナウイルス対策連絡会議」設立を発表する日本野球機構(NPB)の斉藤惇コミッショナー(左)とJリーグの村井満チェアマン=東京都内のホテルで2020年3月2日午後、手塚耕一郎撮影

Q:北海道は市中感染が起きていると考えていいか

西浦氏 クラスター対策班を作り、全国での感染者が集団でどうなっているか見ているが、北海道のクラスターは、北海道の地方に出て初めて見つかることが多い。どことつながっているか分からないのが複数ある。リンクが追えなくなっているクラスターが散見され始めている状態だ。

Q:休校について。感染拡大する時期にない地域では効果が低いと予想される。社会の影響が大きいのに、感染拡大期にもう1回休校できないことを考えると、この時期に休校するのは、感染拡大していない地域には効果が低いのではないか

押谷氏 現時点で、感染拡大していないと断言できる地域はどこにもない。北海道以外に、同じようなことが起きている可能性は他の地域でも十分ある。

Q:各県での陽性率を見れば、感染の拡大がある程度の確度をもってわかるのでは

押谷氏 それは分からない。北海道もよく分からなかった。さきほど尾身先生が説明したように、若年層に感染が広がっていると今の検査では分からない。若年層は重症化するリスクが非常に低い。そういう人で感染が広がっているのは、現時点のシステムは検出できない。軽症、もしくは症状がほとんどないと検出しようがない。全国民一斉にPCR検査すると分かるが、現実的にできない。見えない感染連鎖がありうる。

Q:10~30代へのメッセージあったが、10歳未満をのぞいたのはなぜか

尾身氏 北海道はある意味、試金石だ。都市部と他というのがあったが、ウイルスは全国一緒だ。症状の軽い人も感染させることがあるとは、当初から口酸っぱく言ってきた。北海道で分かったのは、(社会・経済)活動の活発な10~20歳代、ライブハウスへ行ったりした人が実は感染拡大の重要な役割を果たしていること。全部の可能性を言ったら、全員PCRやることになるが、検査能力が限られる中で、PCRの対応力を広げることをしているが、どこを強調したらいいか。分かったことは、10~30代は感染しても症状が軽いので、クラスターサーベイランス(感染の疑いのある人の調査)でも、ひっかかってこない。北海道の人は、若者だけが都市部では集まる。その中で高齢者がいれば、重症化してシステムにピックアップされる。そういうことがないまま、症状が軽いままに遠隔地に行って、実際に感染している。データ分析だと、どうもそういう人が感染のドライビングフォースになっている可能性が極めて高い。

カメラの前で授業をする矢野充博教諭=和歌山市吹上1の和歌山大教育学部付属中学校で2020年3月3日午前、後藤奈緒撮影
カメラの前で授業をする矢野充博教諭=和歌山市吹上1の和歌山大教育学部付属中学校で2020年3月3日午前、後藤奈緒撮影

Q:北海道に、中国人観光客は多いが、東京、大阪も中国人観光客が似たようなものだ。なぜ北海道で多いのか

西浦氏 明らかな感染場所は分からないが、感染時刻を逆算すると、2月前半の11日まで開催されていた雪まつりのころに、多数の感染が起きていた蓋然性が高いと推定している。流行の立ち上がりが、そのころと推測。大阪、東京の感染状況も安心できず、とても警戒し、モニタリングしている。

押谷氏 付け加えると、北海道は、都市部と小さな町が分かれていることが、状況が見えやすかった可能性がある。都市部で若年層中心に感染し、そこから漏れ出したのがいろいろな町に出て行き、北見などは中高年が圧倒的に多いので、見えやすくなった。他の都市部でも、起きている可能性がある前提だ。

Q:見えやすかったから分かったのか

押谷氏 それはあるかもしれない。

Q:北海道の都市部とは札幌か

押谷氏 現時点では感染源は分からない。その可能性も含めていろいろ調査している。

参院予算委員会で新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大への対応策や検査体制などについて答弁する加藤勝信厚生労働相=国会内で2020年3月2日、川田雅浩撮影
参院予算委員会で新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大への対応策や検査体制などについて答弁する加藤勝信厚生労働相=国会内で2020年3月2日、川田雅浩撮影

Q:940人というのは、熊本などで見つかった人の関係も含めての話か?

西浦氏 タイとマレーシアと、日本国内の人では少し違いがある。日本国内の人の滞在歴は、2月20日より前。最新の推定には使えていない。札幌の感染者のみの推計が、2月中旬までは日本国内の発生例のみを用いた。940人は、ちなみに今回の発表の本筋ではないので強調してほしくないが、札幌で流行していた蓋然性が高いという理由。それは外国人の滞在歴に基づいてのものだ。

Q:940人は主に札幌か

西浦氏 北海道全体という推定だ。

Q:風通しの悪い場所でウイルスがどう動くのか。どのような理屈か

押谷氏 さきほども説明したが、長距離のエーロゾルで感染が起きているというエビデンスは全くない。それが主体とは思わない。ただ、短距離の小さな粒子で、感染が起きている可能性はある。そういうものに関しては、そうした環境が効いている可能性がある。きちんとエビデンスがあるわけではない。西浦先生の解析で、可能性が高くなっている。

西浦氏 110例の共通項の一番は、換気があっても十分ではない屋内空間ということ。あと、集団発生が起きたのは、いくぶん湿度が外気より高い空間に見えるということ。

Q:湿度が高いと、ウイルスがどう動くのか

西浦氏 正直、分からない。これまでの感染症の伝播の起きやすさは逆だった。湿度が低い方がインフルエンザの伝播が起こりやすいと分かっており、実験医学的にも、湿度が高い方がウイルスの死滅率が高いとされてきた。これまで(の分析)だとどうも湿度が高いところが多い。何らかの体液を介した接触感染の可能性も否定できず、他の経路の可能性を含めて検討している段階だ。

Q:北海道は、気密性が高い屋内環境ということも大きな理由か

西浦氏 言い切れないが、研究知見を知事とも話したが、「北海道はハイリスクなのかもしれませんね」と言及されていたが、根拠はありません。

Q:若年層というのは10~30代だが、40代もかなり元気だが、うつす可能性があると考えた方がいいか

押谷氏 名古屋のスポーツジムは若年層じゃなかった。そういう人たちからのクラスターも十分考えられる。ただし、そういうクラスターは見つけやすい。重症化しやすいので、見つけやすい。ただ、若年層は見つけにくいというのが我々の仮説です。しかも、中高年とあまり交わらない若年層でのクラスターがつながっていくようなことが、起きているんじゃないか。若年層の閉鎖的な集団で広がると検知できず、実際に感染拡大が起きているのではないか。

Q:「ここ1、2週間が重要」と先生方が言って1週間。この1週間を見ると、何らかの悪い、良いの方向性は見えるか

西浦氏 今後データを見ていってほしいと思うが、増え方が緩まる効果があるかどうかが勝負だ。お願いしたいが、1、2週間と発表しているが、そこにやたらと厳しくならないでください。「ほら1週間じゃないか」と言われると困る。対策の効果が表れるまでに遅れが出てくる可能性があるのを共有していただきたい。北海道で外出自粛を要請した時から顕著に感染者数が減り始めたとする。感染してから発病まで5日間ある。発病して何軒かお医者さんにかかり、詳しい検査で診断されるのがほとんどの感染者の流れ。発病から報告までは平均8日間。潜伏期間と発病から報告までで平均13日かかっている。何らかの顕著な変化は、10日間ほどで表れると思うが、それぐらいのタイムラインで見てほしい。今後も報告者数は一定の増加を認めるものと思うが、報告までにずいぶん時間がたってからだろう。

一旦封じ込めても再流行の可能性

Q 今から2週間ぐらいということで、3月15日ぐらいまでが大規模な集団行動をしないことになっているが、そのへんが傾向が見えてくるか

西浦氏 北海道は、それぐらいのタイムラインでみていただければ。1、2週間がとても重要だが、この流行は封じ込めできるのが国際的に認識されている特徴だが、今の時点で失敗しているというデータではない。封じ込めがいったん成功しても、海外で流行しているので、感染者が日本に入ってきて、流行はぶり返して、何度も続くと思う。対策をして流行を防ぐのは1、2週間の短観で見ていくのではなく、長期戦になる。それを1、2週間ごとに見ていかないといけない。長期戦になるという気持ちで記者の皆さんもデータを見てほしい。

教室の黒板に書かれた新型コロナウイルス対策=千葉市中央区で2020年3月2日午前9時4分、吉田航太撮影
教室の黒板に書かれた新型コロナウイルス対策=千葉市中央区で2020年3月2日午前9時4分、吉田航太撮影

Q:若年層に感染拡大するリスクについてだが、北海道で54例の症例の中に若年層が多いということではないのか

押谷氏 決してそういうわけではない。どこかに大きな感染者の集団がないと今起きていることの説明ができない。それは日本の普通の人口構成と同じ人口構成の集団だとすると全く理解できない。必ず重症者が出てくるくらいの非常に大きな数なので、それを考えると重症化していない人に広がっていると考えないと理解できない。それは先ほど申し上げたように現時点で考えていることで、本当にそういうことが起きているのかきちんと検証する必要がある。

Q:重症化しない人たち、あるいは症状が出ていないで感染している人たちがいるうえで、若年層というのが症状が軽くて、その人が社会活動、経済活動を活発にするので若年層にクラスター形成のリスクがあるということか

押谷氏 先ほど説明したように、若年層に広がってくるとは見えない。いろんな活動をしている。その中にはいろんな例がある。大阪のライブハウスではある一定の数が感染している。北海道で若年層の間で現時点で大きく広がっているというエビデンスはない。ただし、そういうふうに考えないと説明ができない。そういう場は若年層、10代後半から20代、30代の人たちはそういう先ほどから言っているようなリスクのある環境で多くの人が集まるような機会が非常に多い層ではあるといえる。

Q:試金石という言葉もあった。武漢では社会機能を停止させることで感染拡大を防いだ。日本では社会機能を維持しつつ、感染拡大を防ぐということだが、それは海外でも取り組まれていたのか

西浦氏 海外では私が知る限りでは、このレベルできめ細かく対応している事例はない。今回の流行に限ってだが、新型コロナウイルスに関しては社会的に接触を抑制することが著効する。予防に効くことが中国、香港、シンガポールとかの流行対策のこれまでの遂行から相当支持されている。社会的な接触を抑えることによって流行の拡大を防ぐということが一定のレベルでできそうだ。社会経済機能を一定以上の期間停止させることは(多くの国では)継続することができない。中国は、それをとても強い政策的な力で実行してきたわけだが、日本で実施するために日本版の対策をクラスター対策班と専門家会議それぞれで知恵を出し合って考えている。とてもきめ細かな指示、こういう場所での接触は避けましょう、厳しくしない代わりに、社会の道徳として守ってくださいということを相当きめ細かにやることによって、なんとか流行の制御ができないかということを今後一緒に考えていきたい。

尾身氏 最後に加えたい。移動の自由を制限すればいいじゃないか、というイメージがあるが、感染拡大抑制の要諦は一つじゃない。感染者と感染しているかもしれない人の、さっき言ったような空気感染なら別だが、物理的な接触をどれだけ断つかというのが目的だ。人の移動を制限するのが目的ではない。このことをよくマスコミの方は伝えてもらいたい。このことをみんなが分かってやるのが重要。中国は「移動の自由」だが、日本はきめ細かなことができるのではないかということだ。

Q:湿度が高いところでの感染に検討が必要だということだが、教育現場でも学童保育所でも家庭でもインフルエンザと同じ対策で家の湿度を上げればウイルスが活発にならないと取り組んでいる人も多いが、正反対という可能性があるのか

西浦氏 科学的な今までのデータだけでは分からないのが正直な返事だ。今まで湿度が高い空間で伝播が起こっているというのはファクトとしては事実かもしれない。閉鎖空間で湿度が高いという場があっただけかもしれない可能性もある。そういった分析をしたことに一定のバイアスがかかっていることは否定できない。大臣にも昨日、「こういった場所に気をつけてください」と言及してもらったが、そういった情報が出てきているというのは、今あるデータで見つけたものから公表するというところで出しているものだ。今後研究をして知見を重ねることで一定の見解が出るもので、今の時点では分からないのが誠実な返答かと思う。

Q:湿度を上げようというのを引っ込めるところまでいくか

西浦氏 いえ、今の時点で、私自身から湿度の高いところでというのは言及していなかったが、その理由は、湿度に関して今上げ下げしてこうしたほうがいいとか、そこまで至るような恐れとか強い蓋然性がないということだ。

Q:現在の感染状況は(多くの人が免疫を持っていることで感染の連鎖が断ち切れる)集団免疫を期待できるレベルではないとのことだが、大多数とはどういう規模で、今回はどういうことだからそのレベルではない、というような解説をしていただきたい

西浦氏 集団免疫は、人口の中の一定の割合の方が新型コロナウイルスの感染力に比して、多数の人が免疫を持っている人ばかりであるということ。今の人口で、最も流行が進んでいるところを取ってみても数%までは感染していない状態だと思う。集団免疫はまだまだ。そこまで流行の規模が進展すると、相当数の重症者が出る状況になる。

Q:北見である程度のクラスターができているというが、北海道で現在のところどれぐらいあるか

西浦氏 見えているクラスターは北見だけ。あとは見えていないクラスターがある可能性があるということ。

Q:どのぐらいの規模か

西浦氏 本日また新しく感染が確認される方がいる。アップデートした情報は北海道が今晩発表される情報を参照されたい。

Q:北海道の人ができる対策ということで、ライブハウス、カラオケボックス、クラブ、立食パーティー(への立ち入りを避ける)と具体的に示しているが、全国へのメッセージとして使えるのか

押谷氏 他の地域でも起きている可能性があるので、明らかに密室となる環境は避けていくべきだと思う。どういう環境に、どういうふうにしたらいいかは今後詳しく出していきたい。

Q:全国の人に注意してほしいこととして報道しても、大丈夫か

押谷氏 そういうライブハウスは大阪でもあった。全国の皆さんに気をつけてほしいことといえると思う。

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医療プレミア編集部

毎日新聞医療プレミア編集部は、国内外の医師、研究者、ジャーナリストとのネットワークを生かし、日々の生活に役立ち、知的好奇心を刺激する医療・健康情報をお届けします。