医療プレミア特集

「19日まで自粛を」 新型コロナ専門家会議会見

医療プレミア編集部
  • 文字
  • 印刷
過去最大の下げ幅を記録したNYダウ平均と1万9000円台を割り込んだ日経平均を示す株価ボード=東京都中央区で2020年3月10日午前9時半、佐々木順一撮影
過去最大の下げ幅を記録したNYダウ平均と1万9000円台を割り込んだ日経平均を示す株価ボード=東京都中央区で2020年3月10日午前9時半、佐々木順一撮影

 新型コロナウイルス感染症の政府専門家会議は9日、国内の感染状況について「当面、感染者の増加傾向が続くと予想され、警戒を緩めるわけにはいかない」とする見解をまとめた。イベント自粛などの効果が見えてくる19日ごろまでは自粛を当面求める方針。専門家会議のメンバー4人が9日夜に会見し、国内の現状の認識と感染拡大防止策のポイントについて述べた。会見内容は以下の通り。【くらし医療部・野村房代】

 座長 脇田隆字・国立感染症研究所所長(以下脇田氏) 専門家会議として2月24日に1回目の見解、3月2日に2回目を出した。24日から2週間程度たったということで見解を説明する。前回と同じように尾身副座長から内容を説明させる。

 副座長 尾身茂・地域医療機能推進機構理事長(以下尾身氏) 六つのポイントがある。一つ目は感染拡大防止に向けた国の基本戦略。戦略の前に我々の考え方は、社会経済への影響を最小限にしながら感染拡大の効果を最大限にすることを基本としている。その柱1はクラスターの早期発見・早期対応。柱2は患者の早期診断、重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保。柱3は市民の行動変容。日本の状況はこの三つにより感染の拡大スピードを抑えられる可能性があるが、そのためには我々としては、当面の間、三つの柱を強化すべきだと考える。

 二つ目のポイントは、現在の国内感染状況。現時点では数は増加傾向だ。また一定条件を満たす場所で1人が複数に感染させるクラスターが全国各地で相次いで報告されている。しかし、全体として見れば、これまでに国内感染確認者では、重症軽症にかかわらず80%は他に感染させていない。実効再生産数(流行中に1人が2次感染させた平均の数)は、日によって変動があるものの、おおむね1程度で推移。感染者と濃厚接触の方々や地方公共団体、保健所の努力、厚労省のクラスター班の連携と努力が実り、現時点までクラスターの発生を比較的早期に発見できている事例が出てきている。これは急激なペースで感染者が増加している諸外国に比べ、感染者数の増加スピードを抑えることにつながっている。2月24日に発表した専門家会議の見解は、「これから1、2週間が急速拡大するか収束できるかの瀬戸際だ」と述べたが、以上の状況をふまえると、本日時点での日本の状況は爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度持ちこたえているのではないかと考える。しかし、感染者数は一時的な増減こそあれ当面増加傾向は続くと予想されるので、依然として警戒を弱めることはできない。

 三つ目は、重症化する患者について。中国からの報告では感染確認された症状がある人の約80%は軽症、13.8%は重症、6.1%は重篤。また広東省の2月20日時点での報告では、重症者125人中軽快した人は26.4%、症状回復した人は46.4%で、足すと70%以上が良くなっている。我が国の国内での例では感染確認有症者366例のうち55例、15%はすでに軽快、退院している。これは一部の人しか状況を把握していないのでこの15%は確実に増えていくものだと思っている。日本では死亡者数は大きく増えていない。このことは限られた医療資源の中でも日本の医師が重症者の多くを検出し、適切に治療をできているという日本の医療の質の高さを示唆している。今後も死亡者数増加を抑えるために医療提供体制をさらに強化する必要がある。

 四つ目は、北海道における積極的対応。人と人との接触を可能なかぎり控える対策について。今回のコロナでは感染から発病の潜伏期間の平均値は約5日、発病から報告に要する平均時間は8日間。今日みているデータはその2週間前の新規感染の状況をとらえたもの。ここにタイムラグがある。そのため北海道の対策については緊急事態宣言から2週間後からでなければ効果測定は困難だ。その後の感染者数の変化、実効再生産数の変化、感染のリンクが追えている患者数のデータなどを用いて約1週間かけてその対策の効果を判断。したがって3月19日ごろには結果発表できるものと思っている。

 五つ目は、今後の長期的見通し。先週まで報告が少なかった諸外国で患者数が急増した。しかし、すべての感染源を把握していないので、感染拡大が日本各地で起きている可能性もある。国内での流行をいったん抑制できても、しばらくはいつ再流行してもおかしくない状況が続くと見込まれる。また世界的流行に進展していることから国外から感染が持ち込まれる事例も繰り返されると予想している。今後、国内で急速な感染拡大が予想される地域では、地域ごとに人と人との接触を可能な限り控える積極的対策を進め、収束に向かえば比較的感染拡大リスクが少ない活動から解除するなど、社会経済活動の維持と感染拡大防止とのバランスを取る対策を繰り返すことは長期に続くと予想している。専門家会議としては、これからはクラスターの早期発見と早期対応、長期にわたって継続できる体制整備が急務と考える。保健所は労務の負担を軽減すべく「帰国者接触者相談センター」の機能について保健所以外の担い手を求めるなど早急に人的・財政的支援を講じるべきだ。地方公共団体や保健所の広域連携および情報共有が必要。医療提供体制についてはさらなる感染拡大に備え、治療にあたる一般医療機関や診療所を選定し、体制強化の支援をすべきだ。

 最後に、皆さんにおねがい。事業者にはどのような対策を取っているか、取るつもりがあるか積極的に市民に情報提供をしてほしい。市民にとって施設や各種サービスの利用しやすさの判断につながる。市民には、地域の対策として、クラスター防止が重要だ。感染していると知らずに多くの人と接触することで感染を拡大してしまう可能性がある。その機会を減らすために、多くの人が接触する機会をなるべく作らないことが重要だ。①換気が悪い密閉空間②人が密集している③近距離での会話や発声。これが同時に重なるところが集団感染が確認された場所の共通要素だ。三つの条件がすべて重ならなくても何かのきっかけで三つそろうこともある。例えば満員電車では①と②は条件が合う。③はあまりないが場合によってはそういうこともあり得る。もうひとつは不特定多数が参加するイベントは、感染拡大のリスクが高いだけでなくクラスターが発生した時、感染源の特定や接触者調査が困難になり、クラスター連鎖のリスクが高まる。したがって、可能な場合には主催者があらかじめ参加者を把握できているほうが感染拡大リスクを下げられる。

横綱・白鵬の取組で、1本しか掲げられなかった懸賞旗=エディオンアリーナ大阪で20年3月9日、猪飼健史撮影
横綱・白鵬の取組で、1本しか掲げられなかった懸賞旗=エディオンアリーナ大阪で20年3月9日、猪飼健史撮影

Q:24日の見解では瀬戸際といっていたが、現在急速な拡大が抑えられているという理解でいいか。見解をもとに国内ではイベントの自粛や休校措置が取られているが、今後のイベントについてどんな対応をとるべきか。

脇田氏:現在の評価は何とか持ちこたえているという表現。外国では、急速に感染が拡大している国もある。そういう国に比べると、加速度的にではなくすこしずつ増えているという状況だ。「実効再生産数」が1なので(感染は)1人から1人だ。イベントは引き続き、3条件についてよく検討してもらい、どうやったらリスクを下げられるか考えて開催を検討してほしい。特に「このイベントは良くない」ということは議論していない。

Q:現状の対策を維持すべきか緩めていくべきか。

尾身氏:まだ、議論の最中だ。北海道の緊急事態宣言や学校閉鎖など、時間差はあるが行われた。そういうことを評価するには時間がかかるので、3月19日ごろになると。いま見えているのは2週間前の状況だ。見えないウイルスなので全ては分からないが、今よりはっきりしてくる。その結果を踏まえてどれを解除するか。リスクが低いものから解除していくべきだが、19日前後になれば今日よりある程度、明確なことがおおまかに言えるのではないか。

Q:「19日になったらわかる」というのは、北海道だけでなく大きなテーマパークや観戦イベントなども自粛しているが、そうしたものについてもメドが分かる?

尾身氏:24日以来、日々いろいろな要請が出てきたが、要請ごとの効果をはかることはできない。トータルとして評価する。新しい感染が増えたのか減ったのか。

新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象とする改正案を決定する閣議に臨む安倍晋三首相(左から2人目)。左端は茂木敏充外相、右から2人目は麻生太郎副総理兼財務相、右端は高市早苗総務相=首相官邸で20年3月10日、川田雅浩撮影
新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象とする改正案を決定する閣議に臨む安倍晋三首相(左から2人目)。左端は茂木敏充外相、右から2人目は麻生太郎副総理兼財務相、右端は高市早苗総務相=首相官邸で20年3月10日、川田雅浩撮影

Q:屋外イベント、テーマパークなどは19日に見解を示してもらえるのか。

尾身氏:今よりは。

Q:大規模イベントの自粛は、19日ごろまでは続けていくべきだという見解か。

脇田氏:尾身先生が述べた通り、19日ごろまでには感染状況について今よりデータが集まってくるので、その時に判断したい。

Q:現状の対策は続けていくということか。

脇田氏:今お願いしていることをそのまま続けていただきたい。

プロ野球12球団代表者会議を終え、記者会見で開幕延期を発表するプロ野球の斉藤惇コミッショナー(左)。右は巨人の今村司球団社長=東京都港区で20年3月9日、竹内紀臣撮影
プロ野球12球団代表者会議を終え、記者会見で開幕延期を発表するプロ野球の斉藤惇コミッショナー(左)。右は巨人の今村司球団社長=東京都港区で20年3月9日、竹内紀臣撮影

Q:「戦略を強化すべきだ」とあるが、どういう戦略をどう強化?

尾身氏:ここでは三つの柱のことを申し上げている。まずはクラスターの早期発見・早期対応ということ。厚労省内部のクラスター班や保健所などは、ものすごいエネルギーで頑張っているが、これを強化する。努力しているが人的にも足りないという状況があるので。

釜萢敏・日本医師会常任理事(以下釜萢氏):医療提供体制の確保がこれから非常に大事になる。感染症指定機関があるが、クルーズ船の対応で関東中心に感染症病床はそちらにふりむけられている、今後それをどう整備・確保していくかが大事。指定医療機関以外にも対応可能なところにはしっかり協力してもらわないと。

舘田一博・東邦大医学部教授(以下舘田氏) 市民の行動変容は、非常に大事。コロナはインフルのように暖かくなると消えるウイルスではない。数カ月から半年、年を越えて闘い続けなければならないと考えている。市民の一人一人の考え方、行動を変えていくことが大事。どういうところで感染しやすく、どういう対策で防げるかが分かっているので、長期的な視点で一人一人が向き合っていくべきだ。

Q:高齢者の死亡を防ぐためにどんな準備が必要か。

釜萢氏:高齢者が重症になることはわかっているわけで、いかに基礎疾患がある人、高齢者に感染防止するかが非常に大事だ。感染の危険のあるところには、なるべく行かないこと。それ以外の方々からうつされないためにどうするか対応をしっかりしてもらう。

舘田氏:重症化に対しては、今の段階で治療薬がないのが不安になるところだが、感染研でウイルスの分離に早い段階で成功している。そのウイルスを使ってどういう薬が増殖を抑えるかを試験管の中で検討できる。いくつかの薬でその効果が認められている。その一つが吸入用のステロイドのオルベスコ。ただ臨床治験は少ない。学会などと協力して症例を登録する。アビガンなども検討している。そういうものが出てくると重症化を予防し、死亡を減らせる。

浦町放課後児童会の児童らに消毒液の使い方を教えるトム・メディック社の担当者=青森市中央の市立浦町小学校で20年3月9日
浦町放課後児童会の児童らに消毒液の使い方を教えるトム・メディック社の担当者=青森市中央の市立浦町小学校で20年3月9日

Q:業者の対策周知について。ライブハウスや中小企業などにどういう対策を政府がすべきだと考えるか。

脇田氏:感染リスクが高い状況を示しているが、そういう業者の方々がどうすればいいかは行政の中で考えなければならない。

Q:長期戦ということだが、集団免疫が付くまでか、ワクチンができるまでか、見通しは。

尾身氏:皆さんの頭に例のカーブがあるかもしれないが、コロナとインフルとの違いは、インフルでは1人が少しずつ感染させるが、コロナはクラスター感染する。北海道が一番わかりやすいが、北海道は上に行きかけた。強い対応をしたのは、知事のリーダーシップであり、非常に合理的判断。積極的な対応はうまくいけばある程度急激に収束を期待できる。しかし、ゼロにはならない。外国からも来るし、いったん下がるがまた小さな山が長く持続する。鎖国すれば別だが。

脇田氏:国内の流行を抑えている間に半年で治療薬に。1、2年でワクチンにめどをつける。そういう意味で大きな流行を起こさずに持ちこたえる時間稼ぎをし、その間に対抗策を作っていく。集団免疫は難しい。集団免疫は50%が抗体がないと集団免疫にならない。その前に治療薬、ワクチンに期待する方が合理的だ。

Q:急激になりかけたということだが、対策によって一定程度抑えられたという認識か。

尾身氏:今の(見解)は2週間前の話だ。ただ、公衆衛生の基本原則として人と人との感染者とそれ以外の接触を絶つことが最も大事なこと。このことが地域である程度実行されると新しい感染者の発生防止になることはわかっている。中国で新しい感染がなくなっているのは日本よりはるかに積極的な移動制限をし、その結果、接触が少なくなったということだ。北海道でもそれが実行されれば19日ごろになればある程度分かるだろう。

分散登校について、記者会見で説明する北海道の鈴木直道知事=札幌市中央区で20年3月9日、澤俊太郎撮影
分散登校について、記者会見で説明する北海道の鈴木直道知事=札幌市中央区で20年3月9日、澤俊太郎撮影

Q:つまり、全国と同じように今の対策を続けていくべきだということか。

尾身氏:自粛といってもいろいろな段階がある。リスクが高いものから比較的そうでないもの、そのどこまでを解除するかは今回の評価がわかってからであり、今それは判断できない。

Q:19日以降に解除することになった時、一般の人では1、2週間で収束すると思っている人が相当いる。解除すると個人の行動が緩んでしまうのではないか。解除の仕方にはかなり慎重さが求められる。

脇田氏:我々も非常に難しいことだと思っている。19日にどういうデータが出てくるか。効果がはっきり見えているのか変わっていないのか、その評価によって考えていきたい。

Q:コミュニケーションの仕方も重要では。爆発的増加が抑えられているということだが、一方で検査の数が限定的だ。大きな見逃しなく相当捕捉できていると考える理由は。

脇田氏:日本国内の調査は、重症者をほぼとらえられており、必要な人に必要な検査はできている。死亡者数も外国と比べて非常に少ない。肺炎で亡くなった方がいるが、そういった方で感染者の見逃しは少ない。日本では必要な検査は行われているという認識だ。

中国と韓国からの入国規制が始まり、人影もまばらな福岡空港国際線出発ロビー。出発便の案内にも「欠航」の表示が目立つ=福岡市博多区で20年3月9日、森園道子撮影
中国と韓国からの入国規制が始まり、人影もまばらな福岡空港国際線出発ロビー。出発便の案内にも「欠航」の表示が目立つ=福岡市博多区で20年3月9日、森園道子撮影

Q:「医療の体制強化」で、一般の医療機関や診療所が医療体制に加わるためにはどういう支援が必要か。

釜萢氏:帰国者・接触者相談センターおよび帰国者接触者外来の機能が非常にオーバーワークになっている。保健所はクラスターの調査にも大きな役割を果たしている。その機能をどう支援していったらいいか、医師会も強く担わなければならない。どういう形で医師会が役に立てるか厚労省とも協議して支援の枠組み作りをしているところだ。

舘田氏:長期戦になっている。対策や対応を少しずつ変えようとしていることは、お気づきのことだと思う。重症例を救うのは医療において一番大事。一方、軽症者が医療現場に押しかけて「医療崩壊」が起きないように一般の方にお願いしたい。軽症でごはんを食べられてある程度元気な人は、自宅で様子をみてください、と。こういう啓発を進めることで重症例に集中した医療ができる。

Q:今回の見解の中でこれまでとトーンが違うのは、長期的な対応が必要というニュアンスが強まっていること。一般の人が長期的な対応をしていかなればならないことについて改めて呼びかけは。

尾身氏:一般の方々にどんな病気でどんなウイルスと闘っているのか、その実態をわかりやすく説明してほしい。扱いやすい点は多くの人が軽症で、重症でも治ること。一部の高齢者以外は。どういうところで感染しやすいかもだんだんわかってきている。病気の特徴を十分理解してほしい。大事な情報を出し続けますから、それを判断して日々の行動に活用してください。この病気の安心できる部分と懸念する部分を正確に理解してもらえる報道を工夫してほしい。

舘田氏:新型だから予断は許されないが、パニックが一番危険。このウイルスの特徴を知って、効果的に防止する方法を理解し対応していくことが中長期的には必要だ。

医療プレミア・トップページはこちら

医療プレミア編集部

毎日新聞医療プレミア編集部は、国内外の医師、研究者、ジャーナリストとのネットワークを生かし、日々の生活に役立ち、知的好奇心を刺激する医療・健康情報をお届けします。