令和の幸福論

新型コロナ~政治と社会が問われているもの

野澤 和弘
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新型コロナウイルスの感染が拡大する中、マスク姿で街を歩く人たち=東京都台東区のJR上野駅前で2020年3月12日午後0時3分、手塚耕一郎撮影
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、マスク姿で街を歩く人たち=東京都台東区のJR上野駅前で2020年3月12日午後0時3分、手塚耕一郎撮影

 新型コロナウイルスの感染症は増加の一途をたどっている。安倍晋三首相は大規模イベント自粛や全国の学校の一斉休校を要請し、北海道の鈴木直道知事は緊急事態宣言を出して外出を控えるよう求めた。中国と韓国からの入国制限も強化された。感染しても症状の出ない人や軽症者が意外に多く、致死率もインフルエンザなどに比べると低いことがわかってきたが、社会不安は鎮まる気配がない。経済や人々の暮らしには深刻な影響が出始めている。いつ終息するかわからない新型コロナウイルスに対して、政治は何ができるのか。私たちは何をすべきなのかを考えた。【毎日新聞客員編集委員、野澤和弘】

 非常事態が進行している時に必要なのは、政治の強いリーダーシップだ。正確で迅速な情報の提供、感染被害の拡大防止と経済や生活のダメージ抑制のバランスの取れた対策、国民に安心を感じさせられる政治の役割は極めて重要である。

 ところが、安倍晋三首相による全国の小中高校への休校要請には批判が集中している。3月2日から春休みまで臨時休校にするよう首相自ら呼びかけたところ、児童や生徒の教育を受ける機会が1カ月近くも奪われるという懸念だけでなく、シングル家庭や共働き家庭からは子どもが自宅にいると働きに出られなくなるとの批判が噴出した。経済的な困窮やストレスによって虐待やネグレクトのリスクが高まる恐れもある。

 学校を休むことの効果がどのくらいあるのかという疑問も根強い。多数の感染者・死亡者が報告されている中高年に比べ、子どもの感染率や死亡率が著しく低いのが新型コロナウイルスの特徴だ。体調不良になったときには、保健室という医療設備が学校にはある。

 その一方、学童保育や障害児が通う放課後等デイサービスは通常通り運営を続けるという。むしろ狭い空間に大勢の子どもが集まって一定の時間を過ごすことになり、こちらの方が感染リスクは高いと考えるのが普通だ。学童保育などの職員不足や施設のスペース不足をどうするのかという問題も出てくる。

 国会で安倍首相が「専門家の意見を聞かずに決めた」と認めたことにも批判は強い。これだけさまざまな悪影響を被る人が出るのに、独断専行で全国に休校を呼びかけた首相の浅慮が問題とされているのだ。

 それでも、不確かなことばかりで何が正解かわからず、感染拡大を防ごうとすれば何かが犠牲になるという中で、政治のリーダーは迅速な決断を迫られる。そう…

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