午前8時半をすぎると日が当たり明るくなるダウラギリのベースキュンプ。バックは6000m峰のトゥクチェ=2019年10月4日、藤原章生撮影
午前8時半をすぎると日が当たり明るくなるダウラギリのベースキュンプ。バックは6000m峰のトゥクチェ=2019年10月4日、藤原章生撮影

 朝、ベースキャンプで目覚めると頭の中でトランペットが鳴っていた。

 ♪パッパ、パパ、パパパッパ、パパ、パパパッパ、パパ、パァッパー♪

 どこかで聞いた音色だ。サッチモ、ルイ・アームストロングだろうか。

 でも、なぜいま。

 私は彼のレコードを一枚も持っていない。ラジオか何かで聞いたのだろうか。

 何という曲だろう。「セントルイスブルース」? でたらめにタイトルが浮かんだが違う。では何だろう。

 いずれにしても、その音は鳴りやまず、それから何日もずっと続いていた。要するにその朝、私はいたって上機嫌だったのだ。

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藤原 章生

統合デジタル取材センター夕刊報道グループ

1989年、鉱山技師から毎日新聞記者に転職。長野、南アフリカ、メキシコ、ローマ、郡山市に駐在し現在は東京で夕刊特集ワイド面に執筆。2005年、アフリカを舞台にした本「絵はがきにされた少年」で開高健ノンフィクション賞受賞。主著に「ガルシア=マルケスに葬られた女」「資本主義の『終わりのはじまり』」「湯川博士、原爆投下を知っていたのですか」など。過去の記事はこちら→ https://mainichi.jp/search?q=%E8%97%A4%E5%8E%9F%E7%AB%A0%E7%94%9F&s=date