医療の本音

新型コロナ 感染拡大で迫られる苦渋の選択

松本尚・日本医科大学救急医学 教授
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松本尚医師とドクターヘリ
松本尚医師とドクターヘリ

 パリのルーブル美術館に「ナポレオン1世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」という有名な絵画があります。中央でナポレオンが掲げている冠(ラテン語でcorona)こそがコロナウイルスの語源で、その形態が王冠を連想させることから名付けられたそうです。新型コロナウイルスの感染拡大で一気にその名が知られるようになりました。

 我々ドクターヘリの基地病院でも、新型コロナウイルスの感染が疑われる呼吸困難の患者さんを診察した場合、ヘリに乗せて病院へ搬送していいのか議論になりました。狭い機内では乗員の感染リスクが高くなるからです。診療をする医師や看護師が感染リスクを負うことは覚悟の上ですが、ヘリコプターの機長や整備士にまでリスクを負わせることはできません。

 「運航クルーの健康を守るため、疑わしければ救急車で搬送する」ことにしましたが、感染者でも心停止で待ったなしの状態なら、救命を優先してドクターヘリで搬送します。時に医師は「一方を犠牲にし、他方を優先する」判断をしなければならないのです。

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松本尚

日本医科大学救急医学 教授

まつもと・ひさし 1962年生まれ。1987年金沢大医学部卒業。金沢大医学部附属病院 救急部・集中治療部講師、日本医科大救急医学准教授などを経て2014年4月から現職。日本医科大学千葉北総病院救命救急センター長あり、印旛地域救急業務メディカルコントロール協議会会長などを務めている。専門は救急・外傷外科学、救急医学、災害医学、消化器外科学、経営管理学。