新型コロナウイルス感染による肺炎で、友人が急死した。明るく頑健な、元ラグビー選手。まだ56歳だった。職場で発熱し、保健所にPCR検査(遺伝子検査)を申し込んだが、電話すらつながらず、受けられたのはようやく6日後。その結果も出ないまま、単身赴任先の部屋で亡くなっているのを、同僚が見つけた。孤独死だ。彼はなぜ、こんな死に方をしなければならなかったのか。「このままでは、きっとまた同じ不幸が繰り返されます」。泣きはらした目のご遺族の言葉を受けて、検証する。【元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎、取材協力=東京地方部・倉岡一樹】
彼の勤務先は、ある大企業。福岡に家族を残し、社員寮での単身生活で、職場は出先の事務所だった。
彼が家族に発熱を伝えたのは、4月3日の金曜日。翌日になっても熱は下がらず倦怠(けんたい)感があり、週明けの6日から仕事を休んだ。
実は彼の職場では、4月初めから一部の社員が発熱してせきもあった。彼は自身のコロナ感染も疑っていたという。そのため寮の同僚まで感染が広がらないよう、5日から食堂での食事をやめていた。また、自身もPCR検査を受けようと、寮がある世田谷区や東京都の「帰国者・接触者電話相談センター」に何度も電話をしたが、つながらなかったという。
6日、福岡の奥さんに送ったLINEには、こうある。
「電話はつながらんし、検査なんていつになるか? 分からんばい」
同日、彼の職場の発熱者は7人に増え、うち4人が休んでいた。
彼の危惧は当たった。翌7日、社員1人のコロナウイルス「陽性」が判明。会社は、彼を含む二十数人に自宅待機を命じ、検査を受けるよう指示した。
7日の、奥さんへのLINE。
「早急にPCR検査を受けなければならなくなった。電話つながらんのにどうやって?ってことだなあ」
彼は、知り合いの医者などつてをたどった。翌8日、かかりつけ医の一人が保健所に緊急度を伝え、ようやく9日の予約が取れた。
8日のLINE。
「俺は明日15:30、××病院で検査を受けることになった」
「(熱が)38.6 しんどいね」
9日、検査当日。病院に行くと、検査はテントの中だった。熱…
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