医療プレミア特集 フォロー

新型コロナで孤独死した友人に捧ぐ(上)

医療プレミア編集部
緊急事態宣言の発令から2週間、人影もまばらな渋谷駅前のスクランブル交差点=東京都渋谷区で2020年4月21日午後5時3分、長谷川直亮撮影
緊急事態宣言の発令から2週間、人影もまばらな渋谷駅前のスクランブル交差点=東京都渋谷区で2020年4月21日午後5時3分、長谷川直亮撮影

 新型コロナウイルス感染による肺炎で、友人が急死した。明るく頑健な、元ラグビー選手。まだ56歳だった。職場で発熱し、保健所にPCR検査(遺伝子検査)を申し込んだが、電話すらつながらず、受けられたのはようやく6日後。その結果も出ないまま、単身赴任先の部屋で亡くなっているのを、同僚が見つけた。孤独死だ。彼はなぜ、こんな死に方をしなければならなかったのか。「このままでは、きっとまた同じ不幸が繰り返されます」。泣きはらした目のご遺族の言葉を受けて、検証する。【元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎、取材協力=東京地方部・倉岡一樹】

 彼の勤務先は、ある大企業。福岡に家族を残し、社員寮での単身生活で、職場は出先の事務所だった。

 彼が家族に発熱を伝えたのは、4月3日の金曜日。翌日になっても熱は下がらず倦怠(けんたい)感があり、週明けの6日から仕事を休んだ。

 実は彼の職場では、4月初めから一部の社員が発熱してせきもあった。彼は自身のコロナ感染も疑っていたという。そのため寮の同僚まで感染が広がらないよう、5日から食堂での食事をやめていた。また、自身もPCR検査を受けようと、寮がある世田谷区や東京都の「帰国者・接触者電話相談センター」に何度も電話をしたが、つながらなかったという。

 6日、福岡の奥さんに送ったLINEには、こうある。

 「電話はつながらんし、検査なんていつになるか? 分からんばい」

 同日、彼の職場の発熱者は7人に増え、うち4人が休んでいた。

 彼の危惧は当たった。翌7日、社員1人のコロナウイルス「陽性」が判明。会社は、彼を含む二十数人に自宅待機を命じ、検査を受けるよう指示した。

 7日の、奥さんへのLINE。

 「早急にPCR検査を受けなければならなくなった。電話つながらんのにどうやって?ってことだなあ」

 彼は、知り合いの医者などつてをたどった。翌8日、かかりつけ医の一人が保健所に緊急度を伝え、ようやく9日の予約が取れた。

 8日のLINE。

 「俺は明日15:30、××病院で検査を受けることになった」

 「(熱が)38.6 しんどいね」

 9日、検査当日。病院に行くと、検査はテントの中だった。熱…

この記事は有料記事です。

残り2098文字(全文2998文字)

毎日新聞医療プレミア編集部は、国内外の医師、研究者、ジャーナリストとのネットワークを生かし、日々の生活に役立ち、知的好奇心を刺激する医療・健康情報をお届けします。