実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

新型コロナ 治療後に健康影響の懸念

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 前回は、新型コロナウイルスによる感染症は、肺炎だけではなく全身に障害を起こすという事実を紹介し、四つのキーワード「ACE2受容体」「血管内皮細胞炎」「サイトカイン・ストーム」「血栓」に基づいて、病気が起きる仕組みを説明しました。今回は「新型コロナが起こした障害の影響が、かなり長期にわたるかもしれない」ということを、私見をふんだんに取り入れて述べます。

 新型コロナによって肺炎が起きると、肺の中で「間質」と呼ばれる細胞が傷つくことが分かっています。間質というのは、空気を取り込む細胞(肺胞)ではなく、肺胞の周囲に存在する細胞のことです。ここが傷ついて病状が進行すると、間質は「線維化」と呼ばれる変化を起こして元に戻らなくなります。こうなると、肺が硬くなったり、空気を吸ったときのふくらみが悪くなったりして、体は酸素を取り込みにくくなります。すると、例えば日常生活はできたとしても激しい運動ができなくなるといったことがあり得ます。日本でもプロ野球選手やバスケットボールの選手が感染したことが報道されました。彼らは全員が軽症だったと聞いていますが、それでも完全に元のパフォーマンスを取り戻せるのか……。私は不安に感じています。

 新型コロナに感染しても無症状だった人たちは、その後、日常生活を制限されるということは考えにくいと思います。ですが、それなりの症状が出た人たちは、「治癒した後」はどうなのでしょう。

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト