母からもらった腎臓~生体間移植を体験して~

コロナ感染 臓器移植経験者の恐怖

倉岡 一樹・東京地方部記者
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記者が飲んでいる免疫抑制剤。現在は「プログラフ」と「セルセプト」の2種類で、それぞれ朝と晩、12時間おきに服用している=倉岡一樹撮影
記者が飲んでいる免疫抑制剤。現在は「プログラフ」と「セルセプト」の2種類で、それぞれ朝と晩、12時間おきに服用している=倉岡一樹撮影

 5月に入って新型コロナウイルスの拡大ペースはやや鈍化しているものの、収束の見通しは立っていない。いつ、再び拡大に転じるのかという不安もある。感染症との戦いは長期戦も予想されるだけに、「感染したら重症化しやすい」とされる人が抱く危機感はより切迫している。

 重症化しやすい人とは――。糖尿病や心臓病などの基礎疾患のある人、がん患者、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病患者、人工透析患者、医療的ケア児らが想定される。死亡者が多いお年寄りもそうである。

命にかかわる「コロナ感染」

 私は昨年8月8日に生体腎移植手術を受けた。自分が置かれている状況から見えてくるのは、感染したら命にかかわるという厳しい現実だ。

 日本移植学会の「2019臓器移植ファクトブック」によると、2018年に実施された臓器移植(腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓(すいぞう)、小腸)の総数は2430例で、私のような生体同士が2037例と最も多い。そして、臓器別の筆頭は1865例(脳死下、心停止下、生体含む)の腎臓である。臓器提供数(脳死下と心停止下)は10年の改正臓器移植法施行以前からほぼ横ばいだ。人口100万人当たりの脳死などによる臓器提供数はスペイン48人、米国33人などに対し、日本は0・88人にとどまる。

感染と免疫抑制剤のジレンマ

 臓器移植をすると免疫抑制剤を毎日決まった時間に飲み続けなければならない。もらった臓器に拒絶反応を起こさせないためで、服用は生涯続く。拒絶反応が起きてしまうと、臓器の機能が失われるかもしれない。母から「生きなさい」と腎臓を譲り受けた私も、その恐怖とともにある。

 また、薬で免疫力を抑え込むと、抵抗力が弱まり、どのような感染症にもかかりやすくなる。特に手術から1年以内はより警戒が必要とされ、主治医のすすめで手術後、外出時には必ずマスクをしている。コロナ感染症が拡大する前から感染予防のため細心の注意をしてきた。

 命と、もらった臓器を守るために飲んでいる免疫抑制剤が、感染を防いで生きるための足かせになりかねないというのが移植経験者のジレンマだ。

2カ月以上続く「巣ごもり」

 新型コロナの感染予防策も年明けからアドバイスを受けた。主治医から「極力家にいた方がいい」と言われ、会社の許可をもらって在宅勤務をし、巣ごもりは2カ月以上続いている。米国のある病院では、感染した腎移植経験者の3割近くが死亡したとの調査もあり、神経質になってしまっている。

 それでも、病院通いなど外出せざるをえない時が…

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倉岡 一樹

東京地方部記者

1977年生まれ。早稲田大卒。2003年、毎日新聞社に入社。佐世保支局を振り出しに、福岡報道部、同運動グループ、川崎支局、東京運動部、中部本社スポーツグループなどを経て、19年4月から東京地方部。スポーツの取材歴(特にアマチュア野球)が長い。中学生の一人娘が生まれた時、初めての上司(佐世保支局長)からかけてもらった言葉「子どもは生きているだけでいいんだよ」を心の支えにしている。