多民族時代の健康パスポート

新型コロナ 次の波はいつ来るか

濱田篤郎・東京医科大学教授
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 5月14日、政府は新型コロナウイルス流行にともなう緊急事態宣言を、39県で解除しました。残る8都道府県も5月中には解除する見込みです。日本では2月中旬から流行が始まり、4月上旬をピークに、ようやく収束に向かっています。これは、緊急事態宣言により、国民の皆さんが外出を自粛したり休業要請に応じたりしたなどの効果によるものです。しかし、流行がこれで終わったわけでなく、今後も1年近くは流行の波が繰り返されることでしょう。今回のコラムでは中長期的な観点から新型コロナ危機を解説します。

 今回の流行は昨年12月に中国の武漢で発生しました。今年の1月末までには中国全土に広がり、それから全世界に向けて拡大を開始しました。この時点で、世界保健機関(WHO)や各国の保健当局は、新型コロナウイルスがこれほどまでに大きな被害を起こすとは考えていませんでした。

 このウイルスの感染力は1人の感染者から2~3人に拡大するということで、インフルエンザウイルスとほぼ同じです。しかし、感染を起こす時期に違いがあります。インフルエンザは発病後の感染が多いのに対して、新型コロナは発病2日前からの感染が起こります。全く症状のない人からも感染するわけで、予防が大変に難しい病原体なのです。さらに、今年の2月中旬に中国疾病対策センター(中国CDC)が発表したデータでは、致死率が約2%とインフルエンザの20倍以上の高さになります。これに加えて、イタリアやスペインなどでみられた医療崩壊という事態が起きると、致死率は10%以上にも達するのです。

 こうした強力なウイルスの流行を抑えるために、世界各国は都市封鎖や外出自粛という人の移動を止める対策をとりました。日本では都市封鎖が行われませんでしたが、緊急事態宣言が発令されました。また、日本を含む多くの国が自国民の渡航制限や外国人の入国制限を行い、海外から流行が波及しないようにする対策を発動しました。欧米などではこのような措置が奏功し、流行が収束してきています。

 日本でも緊急事態宣言の効果で流行が収束しつつあり、5月末までには全国的な宣言解除が行われる予定です。しかし、解除される時点で流行の火がわずかに残っていると…

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濱田篤郎

東京医科大学教授

はまだ・あつお 1981年、東京慈恵会医科大学卒業。84~86年に米国Case Western Reserve大学に留学し、熱帯感染症学と渡航医学を修得する。帰国後、東京慈恵会医科大学・熱帯医学教室講師を経て、2005年9月~10年3月は労働者健康福祉機構・海外勤務健康管理センター所長代理を務めた。10年7月から東京医科大学教授、東京医科大学病院渡航者医療センター部長に就任。海外勤務者や海外旅行者の診療にあたりながら、国や東京都などの感染症対策事業に携わる。11年8月~16年7月には日本渡航医学会理事長を務めた。著書に「旅と病の三千年史」(文春新書)、「世界一病気に狙われている日本人」(講談社+α新書)、「歴史を変えた旅と病」(講談社+α文庫)、「新疫病流行記」(バジリコ)、「海外健康生活Q&A」(経団連出版)など。19年3月まで「旅と病の歴史地図」を執筆した。