抗NMDA受容体脳炎

「8年越しの花嫁」の難病 診断に抗体検査

医療プレミア編集部
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意思とは無関係に体が激しく動く症状(不随意運動)に襲われた「抗NMDA受容体脳炎」の患者=患者家族提供
意思とは無関係に体が激しく動く症状(不随意運動)に襲われた「抗NMDA受容体脳炎」の患者=患者家族提供

 新型コロナウイルスの感染拡大で「抗体」が注目されている。ウイルスから体を守る免疫反応によって体内に作られる抗体は、さらなるウイルスの体内侵入を防ぎ、再感染しないための役割を果たす、我々の「味方」である。これに対して、抗体が「敵」のように振る舞い、発症するのが自己免疫性の病だ。映画「8年越しの花嫁」(2017年公開)で注目された難病「抗NMDA受容体脳炎」もその一つだ。この病気での「抗体検査」は、感染歴ではなく、現在病気にかかっているかどうかの診断に使われる。今春、国内で初めて検査方法を確立した日本大学医学部で、どんな原理に基づき、どう検査が行われているのか取材した。【照山哲史】

 抗体検査の話に入る前に、抗NMDA受容体脳炎とはどんな病気なのか。実話に基づく「8年越しの花嫁」で、土屋太鳳さんが演じた女性がかかったのがこの病だ。頭痛など風邪に似た症状から始まり、意味不明のことを口走ったり、奇妙な体の動きをしたりする。重い場合は意識を失い、心肺停止に陥ることもある。国内では若い女性を中心に年間で約1000人が発症すると推定され、死亡率は7%とのデータもある。映画では長年にわたる治療で徐々に回復していく様子が描かれているが、十数年前までは原因不明で治療法もなかった。

 少女にとりついた悪魔と神父の闘いを描いた1970年代のホラー映画「エクソシスト」。当時は誰も知らないことだが、少女の実在するモデルが、現代の医学論文ではこの脳炎の患者と推定されると記載されている。そう聞けば、年配の読者ならその症状を想像できるのではないか。長く「悪魔つきの病」と言われてきた病が、ある抗体によって発症すると分かったのは07年のことだ。米国ペンシルベニア大学(当時)のジョセップ・ダルマウ教授が、脳内で神経情報を伝達する神経細胞の膜表面にある「NMDA受容体」(抗原)に、抗体(抗NMDA受容体抗体)が結合す…

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