
<連載2回目までのあらすじ>2016年、夏。名古屋に単身赴任中だったスポーツ記者の私の足の甲がむくみ、靴が入りにくくなった。問題ないと自己判断して放っていると、むくみは徐々に全身へと広がって見た目も変わり、腰や膝に痛みを感じるように。周囲の心配をよそになおも平静を装っていると、翌年には体重が100㌔を超えた。
◇
床をはい、壁と机に爪を立てて、我が身を起こした。泣きたかった。
布団から起き上がることができなくなった私は、机に突っ伏して寝た。2017年3月。休日に単身赴任先の名古屋から川崎市の自宅に帰った私を見て、妻と娘は顔色を失った。
半年で40kg増
体はもう、むくみを通り越してパンパンに膨れていた。
風呂に入ろうにも、体が浴槽に収まらない。体重計の数字は117kg。半年で40kgも増えていた。仕事に戻る朝、妻が車で新横浜駅まで送ってくれた。助手席で「ダイエットがうまくいかなくて」とうそぶく私に、ハンドルを握る妻は、前を向いたまま言った。
「死ぬよ」
さすがにこたえた。新幹線を降りると、その足で名古屋市中心部の病院に向かった。名前を呼ばれ、内科の診察室に入るなり、男性医師は驚いた様子で言った。「帰れませんよ。いいですね」。車椅子に乗せられ、そのまま病棟の6階へと向かった。即入院だった。
検査後、あきれ顔で医師に言われた。「ネフローゼ症候群です。それもかなりひどく、肺や心臓付近にまで水が達していました。この状態で、よく歩いていましたね」
ネフローゼ症候群--。血中に含まれるタンパク質の「アルブミン」が尿に多く出て、血中濃度が下がることで「低たんぱく血症」になる。アルブミンには血管に水分を引き込む役割があり、血中濃度が下がると水分が血管の外に漏れて体内にたまる。結果、足や顔がむくみ、ひどくなると肺や腹部、心臓や肺などにも及ぶ。
医師は続けた。
「倉岡さん…
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