理由を探る認知症ケア

ご飯を「食べていない」という理由(下)

ペホス・認知症ケア・コミュニケーション講師
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 いつもお読みいただきありがとうございます。認知症がある方から、ご飯を食べても「食べていない」と言われることが時々あります。前回に引き続き、同じテーマでお届けします。

 22歳でお見合い結婚をしたOさん(70代・女性)は、2人の子どもを育て上げ、専業主婦として50年以上、家庭を支えてきました。夫は、小さな繊維工場を営んでいたため、朝も夜も働きづめでした。夜遅く帰ってくる夫が風呂上がりに晩酌を楽しめるように、子どもたちとは別のおかずを一品作るというのがOさんの日課で、家族の中では、いつも一番遅く寝て、一番早く起きるという暮らしを50年以上続けてきました。

 子どもたちもそれぞれ独立し、孫が生まれてOさんは50代でおばあちゃんになりました。「若いおばあさんだね」と近所の方に祝福された時は、自分の子どもが生まれた時とはまた違った喜びがあったといいます。

 そんなOさんも、年齢とともに膝や腰に痛みを感じるようになり、徐々に家事ができなくなっていきました。幸い長女家族が近くに住んでいたので、家事に困ることはなかったのですが、家事をしなくなったことをきっかけに、記憶があいまいになり、もの忘れがみられるよ…

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ペホス

認知症ケア・コミュニケーション講師

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケア・コミュニケーション講師」「認知症ケア・スーパーバイザー」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。アプロクリエイト代表。