
新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)し、高齢者にとっては生命の危険を感じる今日このごろでしょう。私事で恐縮ですが、新型コロナウイルス以外に、最近自分の命に関して考えさせられることがありました。
昨年暮れから体調が悪く、いろいろと検査をした結果、2月下旬に前立腺がんが発見されました。詳しい検査をしたところ、残念ながら全身の骨に転移していることがわかりました。高リスク群なので手術は不可能で、治療はホルモン療法しかありません。
治療を開始する直前までかなり弱っていたのですが、幸いにも薬の効果があって今は普通の生活をしています。骨に転移しているといっても、テニスも週3回ほど楽しんでいます。高リスクといっても数年は生きられる可能性が高いので、しばらくは終活の準備ができます。
自身のがんが契機 「譲カード」
私にとってはがんのリスクもありますが、治療でステロイドを服用しているので新型コロナウイルスに感染するとかなり厳しいことになるのではないかと思っています。そのためにコラムで書きましたように「譲(ゆずる)カード」を作成し、人工呼吸器などが足りなくなったときには若い方に譲る意思を示しています。
私がこのような立場になったので、急に終活の話をするのかとお思いの方もあると思います。しかし私は以前か…
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大阪大学招へい教授
いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。