政府の新型コロナウイルス対策に助言をしてきた科学者たちはウイルスとどう向き合ってきたのか。連載3回目は、国立感染症研究所感染症疫学センターの鈴木基(もとい)センター長に聞いた。【聞き手 くらし医療部・金秀蓮】
Q:「中国・武漢で原因不明の肺炎が集団発生している」と、いつ、どのように知りましたか
A:昨年末に我々もメディアを通して知りました。メールで情報交換をしながら、年明けすぐの1月6日に、脇田隆字所長以下、感染研の担当部局の研究者が集まりミーティングをしました。その時はほとんど詳しい情報はなかったので、中国の疾病対策センター(CDC)、世界保健機関(WHO)西太平洋オフィスの関係者と連絡をとりながら詳細な情報を集めようという話をしました。
当初、危機感はなかったが…
Q:当時は危機感を抱いていましたか
A:正直なところ、最初のミーティングの時点では私の中に危機感はあまりなかったですね。海鮮市場で原因不明の肺炎が発生しているが新たな症例はないようだ、海鮮市場で扱っている野生動物が原因だろうと報道されていたと記憶しています。ヒトとヒトとの間で感染する可能性についても話はしましたが、原因が何であるのかもわからなかったので、あまり有意義な議論にはならなかったと記憶しています。
Q:考えが変わったきっかけは何でしょうか
A:原因がコロナウイルスであると判明したことです。1月9日に患者からコロナウイルスが同定されたという海外メディアの報道がありました。これを踏まえて、感染症疫学センターは1月10日に、一般的なコロナウイルスと重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)に関する情報をホームページに掲載しました。その翌日に中国の武漢の研究者がウイルスゲノムの全配列を公表しました。本当にヒトからヒトに感染するかもしれない、普通のコロナウイルスとは違ってSARSやMERSのように重症化するかもしれない、という危機感を持…
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医療プレミア編集部
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