医療の本音

大震災の現場で知った「臨機応変」の重要性

松本尚・日本医科大学救急医学 教授
  • 文字
  • 印刷
	津波被害に遭い使用できなくなった石巻市立病院=宮城県石巻市で2011年9月2日午後2時14分、丸山博撮影
津波被害に遭い使用できなくなった石巻市立病院=宮城県石巻市で2011年9月2日午後2時14分、丸山博撮影

 新型コロナウイルスの感染対策に関連し、「危機管理」という言葉をよく耳にするようになりました。日常の予期しない出来事への対応から国家の安全保障まで、危機管理の規模や内容はさまざまですが、一番身近に感じるのは地震など自然災害の時だと思います。

 東京電力福島第1原発での前代未聞の事故対応を描いた映画「Fukushima 50」では、何事も上意下達で現場の裁量が許されないシーンがたびたび出てくるので、見ている者の心をイライラさせます。ガチガチに固めたルールは災害現場では時として邪魔になります。臨機応変に自律的に判断し、行動できる柔軟な対応が危機管理には必要です。孫子の兵法にも「兵に常勢なく水に常形なし。能(よ)く敵に因りて変化して勝を取る者、これを神と謂(い)う」とあるのもうなずけます。

 映画が描く場面とちょうど同じころ、私は津波によって機能が停止し、孤立した石巻市立病院の病院避難の指揮を執っていました。同院から3kmほど離れた総合運動公園に患者さんを集めて他の病院に収容する任務です。仙台市内の医療機関へ搬送する予定でしたが、搬送手段はすぐに確保できませんでした。このままでは彼らは運動公園に設けられたテントの中で寒い一夜を過ごすことになります。

この記事は有料記事です。

残り543文字(全文1070文字)

松本尚

日本医科大学救急医学 教授

まつもと・ひさし 1962年生まれ。1987年金沢大医学部卒業。金沢大医学部附属病院 救急部・集中治療部講師、日本医科大救急医学准教授などを経て2014年4月から現職。日本医科大学千葉北総病院救命救急センター長あり、印旛地域救急業務メディカルコントロール協議会会長などを務めている。専門は救急・外傷外科学、救急医学、災害医学、消化器外科学、経営管理学。