新型コロナウイルスの影響で、いわゆる「コロナうつ」が懸念されています。私も経験した、重い気分が続くようなら、治療を要する病気だと判明した方がよい半面、リスクもあります。

 身の回りの問題で、医学の対象でなかったものが、診断・治療されるようになることを「医療化」と呼びます。歴史的にその範囲は広がり、人の誕生から死までが対象になり、行動や言動、態度や振る舞いもそうなりました。職場や学校に行けなくなったり、人付き合いがうまくいかなくなったりした場合、病気となれば休んだり治療の対象になったりします。これは「社会生活」が医療の対象になったとも言えます。

 もちろん診断されれば、助けが必要な人に手が差し伸べられます。しかし、人は問題に直面して解決できなくなると、落ち込んで人付き合いがしにくくなり、孤立しがちです。そうなるとますます助けを呼べない、そんな自分が嫌になり生きる希望さえ持てないという悪循環に陥ります。そうして狭められた選択肢から抜け出せないのが病気だとされれば、それを巻き戻していくための支援が必要であると気づけます。

この記事は有料記事です。

残り545文字(全文1008文字)

中山 和弘

聖路加国際大大学院看護学研究科看護情報学分野教授

1985年に東京大医学部保健学科を卒業し、90年に同大大学院医学系研究科保健学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、愛知県立看護大助教授などを経て、2004年から聖路加国際大大学院看護学研究科看護情報学分野教授。適切な情報に基づく意思決定や行動をケアする看護情報学、保健医療社会学が専門。ヘルスリテラシー、意思決定支援、ヘルスコミュニケーションやそのサポートネットワークなどについて研究している。ウェブサイト「健康を決める力」(http://www.healthliteracy.jp/)を運営。