政府の新型コロナウイルス対策に助言をしてきた科学者たちはウイルスとどう向き合ってきたのか。連載最終回は、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長に聞いた。【聞き手 くらし医療部・金秀蓮】
今のところ「大人の病気」
Q:今回の新型コロナウイルスと季節性のインフルエンザとは、どのような点が異なるでしょうか。
A:ウイルス性呼吸器感染症という点では共通点がありますが、新型コロナウイルス感染症はインフルエンザとは似て非なるものであることがだんだんわかってきました。たとえば、インフルエンザも肺炎を起こしますが、新型コロナウイルス感染症はいったん肺炎を発症すると急速に重症化しやすくなります。インフルエンザは子どもに発症者が多く、高齢者の場合は感染者数がそれほど多くなくても重症、死亡の割合が高い。新型コロナに関しては、原因はまだよく分かっていませんが、子どもは感染者数も少なく、重症化の割合もはるかに低いものです。新型コロナは現在のところ「大人の病気」だということです。
感染力についてはインフルエンザほどではないけれども、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)よりは高い。致死率はSARS、MERSより低いけれども、インフルエンザよりは高い。しかし、8割は軽症で済むので冷静に対応し、残り2割の肺炎を発症した人、あるいは発症しそうな人を早く見つけて適切な医療に結び付ければ、なんとか対応が可能な病気ではないだろうかという思いをずっと持っていました。
今回、中国・武漢から流行が始まったわけですが、2003年のSARSと比…
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医療プレミア編集部
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