健康な人の脳や心臓など全身に、新型でないコロナウイルスの一種も含めて、少なくとも39種類のウイルスが「常在」しているという東京大の研究のニュースが目を引きました。ツイッターでつぶやいたところ、やはりたくさんの人にアクセスされました。ウイルスがいても、必ずしも病気といえず普通に生活しているわけです。

 そもそも病気とは何でしょうか。現代では、医学の影響が強く、医師による診断がつくかどうかが支配的です。それで思い出すのは、高校の頃のある日、前腕を動かすと皮膚の表面あたりが痛くなった経験です。体育の柔道の時間にも何もできず、もちろん走ると痛いので、仕方なく病院を受診しました。すると、医師は「その部分には解剖学的に痛くなる原因となるものが何もないので診断はできない」と言いました。「でも痛いんですが」と言うと、「医師は、目の前で患者がのたうち回って苦しんでいても、どこが問題か診断ができなければ何もできないんだよ」と言われました。医学とはそういうものなのかと思ったのを覚えていますし、この経験は自分の研究につながっていったように思います。

 みなさんは、病気のことをあらわす言葉をいくつ思いつくでしょうか。病気のほかには、疾患、病(やま)いなどがあります。英語でも、sickness、disease、illnessがあります。学術的には、この三つの単語を用いて、それぞれ意味内容が異なるものとして、使い分ける方法が知られています。それぞれ近い意味の日本語と対応させて紹介したいと思います。

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中山 和弘

聖路加国際大大学院看護学研究科看護情報学分野教授

1985年に東京大医学部保健学科を卒業し、90年に同大大学院医学系研究科保健学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、愛知県立看護大助教授などを経て、2004年から聖路加国際大大学院看護学研究科看護情報学分野教授。適切な情報に基づく意思決定や行動をケアする看護情報学、保健医療社会学が専門。ヘルスリテラシー、意思決定支援、ヘルスコミュニケーションやそのサポートネットワークなどについて研究している。ウェブサイト「健康を決める力」(http://www.healthliteracy.jp/)を運営。