新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した東京都江東区の特別養護老人ホーム「北砂ホーム」では、4月25日以降、入居者40人、ショートステイ利用者4人、職員7人の計51人が感染し、このうち入居者5人が搬送先の病院で死亡した。無症状者はあえて施設内で健康観察を行い、症状が出た人だけを系列病院に搬送。PCR検査や応援職員の確保を含め、ほとんどを自前で対応した全国でも珍しいケースにあたる。施設と病院、両方の指揮を執った社会福祉法人「あそか会」の古城資久理事長と、施設内で医療支援にあたった白石広照医師、和田敬子施設長に、収束までの道のりや「第2波」に向けて必要な備えなどを聞いた。【くらし医療部・黒田阿紗子】
10人中9人が陽性……
<北砂ホームで入居者の発熱が相次いだ4月は、都内で1日に報告される新規感染者数が100人を超える日が続いていた。高齢者は重症化のリスクが高いため、厚労省が「原則入院」とする方針を示していたが、病床確保が追いつかない各地の医療機関では新規感染者の受け入れが困難となり、介護施設内で死亡する高齢者が相次いでいた>
古城 新規入居して間もない人が、4月15日に発熱した。誤嚥(ごえん)性肺炎という診断だったが、他にも発熱する入居者が出て、21日には計10人に。「これはおかしい」と、江東区保健所に連絡をした。22日に保健所の案内で感染の有無を調べるPCR検査を受け、3日後の25日、10人中9人が陽性という結果が出た。この時点で、クラスターが発生したと分かった。
施設は5階建てで、1階がデイサービスと事務所になっており、2~4階に入居者がいる。保健所の指導で、PCR検査の結果が出る前に、発熱者が多く出た2階で働く職員は全員、出勤停止にした。23日からはデイサービスの利用と、新規の入所、ショートステイの新規受け入れも自主的に休止した。3階でも感染者が出たため、27日からは3階の職員も全員、出勤停止と…
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