理由を探る認知症ケア

ひ孫が亡くなったと思い込んだ理由

ペホス・認知症ケア・コミュニケーション講師
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 Tさん(90代・女性)には娘さんが2人いて、孫が6人いて、ひ孫も6人いました。1人目のひ孫が生まれたのは82歳の時でしたが、Tさんはとても喜ばれ、「これでいつお迎えが来てもええくらいしあわせやわ」と会うたびにおっしゃられていました。

 そんなTさんが85歳を過ぎた頃、少しずつもの忘れの症状が見え始めました。同居していた長女夫婦は、日々の暮らしで困ることもなく、食事も自分で食べられるし、お手洗いもお風呂も自分で行けていたので、年齢相応のもの忘れだろうとあまり気に留めていませんでした。

 しかし、久しぶりにお孫さんが遊びに来た時に、ひ孫をみて「誰の子なの? あら、わたしのひ孫なの? へ〜それは知らなかったわ」と驚いている様子を見て、もしかすると認知症なのかもしれないと心配になって受診することにしました。「アルツハイマー型認知症」という診断結果は出ましたが、身の回りのことはある程度自分でできていました。何よりひ孫と会うたびに、「誰の子なの?」とは言うものの、「いつお迎えが来てもええくらいしあわせやわ」とも言っていたので、家族は「なんだか、おばあちゃんらしさは変わらないね」と、Tさんが認知症であることについては、受け入れることができたのだそうです。

 ところが、ほどなくして家族にとっての大きな転機を迎えることになりました。リビングのカーペットでつまずいたTさんが、左足の付け根を骨折し入院。人工関節に入れ替えることとなり、長期間のリハビリを余儀なくされることになりました。

 病院でのリハビリは順調に進み、歩行器で体を支えれば段差のない廊下くらいは歩けるレベルにまで回復しまし…

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ペホス

認知症ケア・コミュニケーション講師

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケア・コミュニケーション講師」「認知症ケア・スーパーバイザー」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。アプロクリエイト代表。