医療プレミア特集

忘れられた3億人の感染者 ウイルス性肝炎

医療プレミア編集部
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ブルキナファソから毎日新聞の電話取材に応じるドラマン・カニアさん=パリで2020年7月22日、久野華代撮影
ブルキナファソから毎日新聞の電話取材に応じるドラマン・カニアさん=パリで2020年7月22日、久野華代撮影

 わずか半年で世界を席巻した新型コロナウイルスは現在、医療や研究開発の現場で感染拡大を食い止める努力が続けられている。その一方、すでに検査方法もワクチンも治療薬も存在するのに、世界で1日平均約3600人の命が奪われ、今も静かに流行が続いているウイルス性疾患がある。肝炎だ。

 世界保健機関(WHO)は、ウイルス性肝炎の感染者を世界で約3億2500万人と推計する。ウイルス性肝炎は、結核、マラリア、エイズの3大感染症に匹敵する犠牲者を出しながら、国際的な対策がほとんど打たれないまま感染が広がり続けてきた。日本でも、370万人のウイルス性肝炎の持続感染者(キャリアー)がいると推計され、がんや肝硬変などの重症化対策が課題だ。病として科学が認知してから50年以上の歴史を持つウイルス性肝炎対策はなぜ、グローバルヘルスの谷間に落ち込んできたのか。7月28日は、肝炎のない世界を目指す「世界肝炎デー」。

 「膨大な感染者がいるのに、この国で肝炎は顧みられない」

 西アフリカの内陸国ブルキナファソのウイルス学者、ドラマン・カニア氏(47)は言う。ブルキナファソでは人口約2000万人の9%がB型肝炎ウイルスに、3.6%がC型肝炎ウイルスに感染していると推計される。WHOが「感染率が高い地域」とする指標の2%を上回る。

 カニア氏はフランスでウイルス研究に従事し、帰国後の2013年、ブルキナファソ第2の都市ボボジウラッソで患者団体を立ち上げた。医療従事者への啓発や教育、肝炎検査の推進などに取り組んでいる。

 カニア氏は現状について「肝炎を発症するのは、多くが働き盛りの男性だ。でも貧しい人たちは肝がんや肝硬変に悪化して初めて病院にやってくる。それではもう手の施しようがない。生計を支える男性が亡くなり、残された子供や女性たちは何の援助も得られず、貧困に陥ってしまう」と語る。そのうえで「国の感染症対策はマラリア、エイズ、結核などが優先されている。これらの病気は確かに深刻な問題だったが、対策のおかげで現在は減少傾向にある。これらの対策ももちろん必要だが、肝炎は今、手を打たなければ第2のエイズになる」と警鐘を鳴らす。

 ブルキナファソで肝炎の拡大を防ぐには、母子感染対策が鍵だと言う。B型肝炎に持続感染した母が出産時に赤ちゃんにウイルスをうつしてしまうことがある。生後24時間以内に赤ちゃんにワクチンを打てば感染は防げるが、知識のある人材も資金も不足している。「国際社会に対策の重要性を知ってもらいたい」とカニア氏は訴える。

 肝炎ウイルスは特徴によってA~E型に分類される。世界保健機関(WHO)によると、肝炎ウイルスが引き起こす世界の年間の死者数は約134万人。大半がB型とC型のウイルス感染で、このうち6割がB型、4割がC型だ。途上国を中心に、A型やE型で亡くなる人もいる。B型肝炎ウイルスは世界で2億6000万人の感染者がいるとさ…

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