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安楽死について議論する前に

星野哲・ライター/立教大学社会デザイン研究所研究員
 
 

 「ALS患者安楽死事件」と呼ばれるようになるのだろうか。京都の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者を、主治医でないどころか直接の面識さえもない宮城と東京の医師2人が報酬を得て殺害したとされる嘱託殺人事件のことだ。これまで積み重ねられてきた安楽死の議論とは全く別物の、あまりに粗雑で乱暴な事件だが、二つの点は論じておきたい。

 一つは、背景にある優生思想の社会への不気味な広がりと、そこに生じている「正しさ」の怖さ。「いのち」に関わることは白か黒かの正しさ争いではなく、白と黒の「あわい」の中にあるということについて。もう一つは、安楽死は本当に制度として必要なのかという論点についてだ。

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ライター/立教大学社会デザイン研究所研究員

ほしの・さとし 1962年生まれ。元朝日新聞記者。30年ほど前、墓や葬儀の変化に関心を持って以降、終活関連全般、特にライフエンディングについて取材、研究を続けている。2016年に独立。立教大学大学院、東京墨田看護専門学校で教えるほか、各地で講演活動も続ける。「つながり」について考えるウエブサイト「集活ラボ」の企画・運営も手がける。著書に『人生を輝かせるお金の使い方 遺贈寄付という選択』(日本法令)、「『定年後』はお寺が居場所」(同、集英社新書)「終活難民-あなたは誰に送ってもらえますか」(2014年、平凡社新書)ほか。