
私がこのような「逝き方コラム」を担当する経緯について、少し詳しくお話ししたいと思います。
最初に書いたように、私は前立腺がんが見つかり、残念ながら全身の骨に転移しております。現在はホルモン治療をし、経過が順調なことから数年は寿命があるのではないかと推測しております。しかし、突然薬が効かなくなったり、がんが変異したりすると、この予想も全くあてになりません。今回のように新型コロナウイルスに罹患(りかん)すると年齢的な問題や全身の状態から考えると重症化する可能性は決して低くはありません。つまり私の寿命はいつ果てるともしれないと思っています。このような状態は多くの高齢者の方にも当てはまるのではないでしょうか? ただ具体的な病名がつけられていないために、なんとなく安心だと思っているだけだと思います。さて、がんの早期発見や啓発のためにも私の経験をお話しすることは大切なことだと思います。
最初は「疲労感だけ」
自覚症状として感じたのは昨年の暮れです。自覚症状といっても、体がだるいとか疲れやすいなどの症状で痛みや不快感があったわけではありません。当時、私は月に10回ぐらいの講演会があり、全国を飛びまわっていました。自分の医院や病院での診察があるので、検査の機会はありましたが、症状が疲労感だけなので様子を見ていました。
年末にあまりにもしんどいので血液検査をしたところ、骨に関するデータが悪くなっていました。そのうち食欲が急激になくなり体重が6~7キロ落ちました。これは尋常で…
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大阪大学招へい教授
いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。