
太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)の患者さんから同じ問い合わせが相次いで寄せられています。「ポビドンヨード(商品名はイソジンなど)を使ったうがいは危険なはずでは?」というものです。8月4日に大阪府の吉村洋文知事が記者会見で、ポビドンヨード入りうがい薬の使用を呼びかけたことに対して、疑問を感じた人たちからです。谷口医院では14年前の開院当初から「イソジンでうがいをすると、水でうがいをするよりも風邪をひきやすくなる」と、患者さんに言い続けています。医療プレミアでも過去に何度か紹介したことがありますが(参照:「うがいの“常識”ウソ・ホント」)、ここでもう一度その根拠になるグラフを見てみましょう。
下のグラフを見れば一目瞭然です。ポビドンヨードでうがいをしても、風邪は防げないのです。一方、水(水道水)でのうがいには予防効果があります。京都大学の研究グループが2005年にこの研究を発表して以来、「風邪の予防は水でうがい」は医療者の常識になっています。従来のコロナウイルスも、そして新型コロナウイルスも広義には「風邪」です。つまり、ポビドンヨードを使っても、新型コロナの予防にはならないことが当然…
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谷口恭
太融寺町谷口医院院長
たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト