百寿者に学ぶ バランス健康術!

新型コロナ 糖尿病はなぜ重症化させるのか

米井嘉一・同志社大学教授
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「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の後に記者会見をする西村康稔経済再生担当相=東京都千代田区で2020年8月7日、大西岳彦撮影
「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の後に記者会見をする西村康稔経済再生担当相=東京都千代田区で2020年8月7日、大西岳彦撮影

 糖尿病が持病だと新型コロナウイルスに感染しやすい、コロナ感染症による肺炎が重症化しやすいと言われています。今回はその理由を紹介します。まだ不明なことが多い分野ですが、肺炎にかかりやすい理由から始めます。

 愛知医科大学による糖尿病患者の死因に関する大規模調査(45,000例)の結果、悪性腫瘍38%、次いで肺炎などの感染症が17.0%と多くみられました。糖尿病を患っている人は患っていない人に比べて、約1.8倍も肺炎にかかりやすいという報告があります。

 糖尿病とひとくくりに言っても、さまざまな場合があります。きちんと治療を受けて血糖管理が良好な人、治療を受けているが血糖管理が不十分な人、治療を受けずに高血糖状態が野放しになっている人では、状況は全く異なります。当然、高血糖がひどい人の方が肺炎リスクは高まるのです。糖尿病患者は血糖管理を厳格にして、食後の高血糖を避け、感染予防を人一倍、注意深くする必要があります。

 糖尿病の人はなぜ感染症になりやすいのでしょうか。

 人間の体は、体内に侵入しようとするウイルスや細菌から常に攻撃を受けているため、高度な感染防御機構が備わっています。しかし、糖尿病があると感染防御機構が弱まってしいます。

 感染防御機構の中でも免疫機能は最も重要です。さまざまな種類の免疫細胞が互いに協力しあいながら、細菌やウイルス、がん細胞といった敵と闘っています。糖尿病のような糖化ストレスが強い状態になると、個々の免疫細胞が影響を受けて、免疫機能が低下してしまうのです。糖化ストレスについては、連載記事「認知症、がんのリスクを上げる『糖化ストレス』とは」「老化や病気の原因『糖化ストレス』を防ぐには」を参照してください。

 糖化ストレスによって免疫細胞の機能が低下するメカニズムとして、主に二つの経路があります。第一はミトコンドリアの機能低下、第二は糖化ストレスにより生じる終末糖化産物(AGEs)が細胞内に取り込まれ、…

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米井嘉一

同志社大学教授

よねい・よしかず 1958年東京生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。89年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。08年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、日本人間ドック学会評議員。医師として患者さんに「歳ですから仕方がないですね」という言葉を口にしたくない、という思いから、老化のメカニズムとその診断・治療法の研究を始める。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。