新型コロナウイルス感染症のまん延で在宅勤務が広がっています。しかし、在宅勤務には大きな落とし穴があります。通勤をせず、自宅で長時間座ったまま仕事を続けると、がんを含めた病気のリスクが高まるからです。

日本は世界有数の「長く座る国」

 もともと、日本は世界有数の「長く座る国」です。オーストラリアの研究では、日本人が平日に座っている時間は1日7時間と、調査対象の20カ国中、最長でした。加えて、コロナによる影響で在宅勤務が多くなり、座っている時間がさらに長くなっています。

 今年4月、在宅勤務をしている20~50代の会社員の男女を対象に健康器具販売会社が実施したアンケートの結果、約8割の人が「座って仕事する時間が増えた」と回答しています。1~3時間増えた人が4割強で最も多く、3~5時間が約2割、5時間以上の回答も2割弱ありました。

 また、「自宅でできる運動をしている」という人は半数以下でした。6割弱の人が「在宅勤務になり体への影響がある」と答えています。

座る時間が長いと がんのリスクが…

 米国の大規模な調査では、1日6時間を座って過ごす女性は、座る時間が3時間未満の女性に比べて、がんの発症が多いことが分かりました。特に、乳がん、卵巣がん、多発性骨髄腫のリスクが高くなりました。

 さらに、肥満の程度や喫煙などのいくつかのリスクファクターを考慮しても、1日6時間を座って過ごす人は、座る時間が3時間未満の人に比べて死亡リスクが、女性では34%、男性でも17%高いことが分かりました。

 毎日わずかでも運動をすれば、死亡リスクは低くなる傾向がありましたが、運動をした場合でも…

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東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1985年東京大医学部卒。スイス Paul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、同大医学部付属病院放射線科助手などを経て、2021年4月から同大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。同病院放射線治療部門長も兼任している。がん対策推進協議会の委員や、厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」議長、がん教育検討委員会の委員などを務めた。著書に「ドクター中川の〝がんを知る〟」(毎日新聞出版)、「がん専門医が、がんになって分かった大切なこと」(海竜社)、「知っておきたい『がん講座』 リスクを減らす行動学」(日本経済新聞出版社)などがある。