実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

新型コロナ 差別を恐れ検査を嫌がる人たち

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 前々回のコラム「新型コロナ 社会の要請に応えてPCR検査増を」で述べたように、新型コロナウイルスのPCR検査は希望してもほとんどのケースで拒否されます。症状があっても軽症では受け入れてもらえず、感染者と「濃厚接触」したため検査が必要だ、と認定されるにはいくつかの条件を満たしていなければなりません。私が院長を務める太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)では、谷口医院をかかりつけ医にしている人と、海外渡航で入国先から求められているケースには対応するよう努めていますが、希望するすべての人の期待には応えられていません。検査の際には別室の確保、防護服の手配、消毒処置などが必要となるために検査数が限られるからです。

 しかし、希望しても検査が受けられずに困っている人が多い一方で、検査を勧めても拒否する人が少なくありません。過去のコラム「新型コロナ 『全員入院』が招く検査拒否と医療崩壊」では、「仮に感染していても入院はしたくない」との理由で検査を断った女性の事例を紹介しました。この事例は私が3月に経験したものでしたが、同じように検査を拒否する人は依然少なくなく、むしろ増えているような印象があります。片や検査をしたくてもできない、片や検査ができるのに勧めても拒否する、というわけです。

 なぜ検査を拒否するのか、その心理を考える前に実際の事例を紹介しましょう(ただし、いつものようにプライバシー確保の観点からアレンジを加えています)。

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト