ボストン発 ウェルエイジング実践術

自殺ほう助や安楽死 欧米の終末医療事情

大西睦子・内科医
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 日本で先日、2人の医師が嘱託殺人罪で起訴されました。起訴内容は、2人が難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者(当時51歳)に頼まれ、女性の自宅を訪れて、致死量の薬物を投与し殺害したというものです。海外では、この医師たちの行為に一見すると似た行為を合法化している国があります。どんな制度があるのか、日本の事例はその制度にあてはまるのかなどを米国の事情を中心に紹介します。

 米国では現在、全米50州のうち9州(オレゴン、ワシントン、バーモント、モンタナ、カリフォルニア、コロラド、ハワイ、ニュージャージー、メーン)とコロンビア特別区(ワシントンDC)で、医師が処方した致死量の薬を、患者が自ら服用して死亡する「医師による自殺ほう助(Physician-Assisted Suicide、PAS)」が合法化されています。

 各州いずれも、対象は18歳以上の患者です。PASを求める患者は、担当する医師に対して口頭による要求を2回、少なくとも15日(ハワイ州は20日)の間隔で行う必要があり、さらに書面でも要求しなければなりません。一方、担当医は、こうした要求を電子カルテに記録しなければなりません。そして医師がPASに協力するには「患者は余命が6カ月以内と推定される終末期である」「医学的意思決定を下す能力がある」と判断し…

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大西睦子

内科医

おおにし・むつこ 内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に、「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側」(ダイヤモンド社)、「『カロリーゼロ』はかえって太る!」(講談社+α新書)、「健康でいたければ『それ』は食べるな」(朝日新聞出版)。