地域で生活する認知症の高齢者が日中を過ごす場所として機能しているデンマーク・オーデンセのデイサービス施設=筆者撮影
地域で生活する認知症の高齢者が日中を過ごす場所として機能しているデンマーク・オーデンセのデイサービス施設=筆者撮影

 高齢になっても、認知症になっても、地域で生活を続けていくには、家族だけではなく、さまざまな支援が不可欠です。それらの支援の中でも、デンマークにおいて、地域における認知症の高齢者をサポートする重要な役割を担っているのが、「認知症コーディネーター」です。今回は、この「認知症コーディネーター」をご紹介しましょう。

 「認知症コーディネーターは、『認知症コンサルタント』とも呼ばれ、全国のコミューン(市町村に相当)にいますよ」

 デンマーク中部にあるミドルファート・コミューンで認知症コーディネーターをしているハンヌ・コンラッドセンさんは教えてくれました。

 筆者が訪れた2015年当時、ミドルファート・コミューンには認知症コーディネーターが3人配置されていました。

 3人の資格は、一定の医療行為ができる介護職である社会保健介護士、看護師、ケアホームアシスタント(社会保健介護士の資格ができる前の介護資格)であり、それぞれが平均して40人程度の認知症のケースを扱っていました。

 認知症コーディネーターは、認知症の診断を受けた人の自宅を最初に訪問し、本人や家族、生活、自宅、地域の状況などを評価し、ケアプランを作成するビジテーターに報告します。ビジテーターは、ミドルファート・コミューンの高齢者部署には6人配置されていました。日本のケアマネジャーに相当しますが、公的サービスが主であるデンマークでは民間の人ではなく、全員公務員です。

 認知症コーディネーターは、報告の際に必要なサービスについて意見を添えます。ビジテーターはこの報告と、必要であれば自らの訪問で取得した情報をもとにケアプランを作成します。ビジテーターが作成したケアプランは、コミューンの専門職らによる審査・承認を経て、実行に移されます。

 家庭医と公的機関であるレギオーン(都道府県に相当)が運営する病院(老年精神科や神経内科が中心)、訪問診療や訪問看護を行う地域精神医…

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銭本隆行

日本医療大学認知症研究所研究員

ぜにもと・たかゆき 1968年広島市生まれ、福岡市育ち。51歳。早稲田大学政治経済学部在学中にヨーロッパを放浪。そのときにデンマークと出会う。大学卒業後、時事通信社、産経新聞社で、11年間の記者生活を送る。2006年にデンマークへ渡り、デンマーク独自の学校制度「国民高等学校」であるノアフュンス・ホイスコーレの短期研修部門「日欧文化交流学院」の学院長を務めた。全寮制の同校で知的障害者のデンマーク人らと共に暮らし、日本からの福祉、教育、医療分野に関する研修を受け入れながら、デンマークと日本との交流を行ってきた。2010年にオーデンセペダゴー大学で教鞭を執り、2013年にはデンマークの認知症コーディネーター教育を受けた。  2015年末に日本に帰国し、2016年3月に名古屋市の日本福祉大通信制大学院で認知症ケアシステムに関する修士号を取得し、同年、福岡市の精神障害者の生活訓練事業所の設立・運営に携わる。現在は札幌市の日本医療大学認知症研究所と名古屋市の日本福祉大学大学院博士後期課程に在籍しながら地域包括ケアシステムに関する研究を進めている。ノーマライゼーション理念の提唱者であるデンマーク人の故N.E.バンクミケルセンにちなむN.E.バンクミケルセン記念財団理事も務める。