医療プレミア特集

北海道コロナルポ(上) 広がる懸念

医療プレミア編集部
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ラグビー日本代表のリーチ・マイケル選手の雪像(右奥)も登場し、マスク姿の観光客でにぎわった「さっぽろ雪まつり」=札幌市中央区で2020年2月4日、竹内幹撮影
ラグビー日本代表のリーチ・マイケル選手の雪像(右奥)も登場し、マスク姿の観光客でにぎわった「さっぽろ雪まつり」=札幌市中央区で2020年2月4日、竹内幹撮影

 新型コロナウイルスの感染が国内で最も早く顕著となった北海道で、最初に感染が確認されてから半年が過ぎた。全国に先駆け、独自の緊急事態宣言を打ち出し、一斉休校に踏み切った北海道。老人介護施設などで同時多発的にクラスター(感染者集団)が相次いだものの、「第2波」をいち早く乗り越えた。そして今、繁華街ススキノではある異変が起きている。その時、鈴木直道知事はどのような判断を下し、現場では何が起きていたのか。関係者の証言を基に激動の180日をドキュメントで3回にわたって振り返る。(敬称略。肩書は当時、年齢は7月末現在)

 さっぽろ雪まつりの開催を目前に控え、マスク姿の観光客が行き交う札幌市中心部。街をネオンが彩り始めたころだった。

 「道内で感染者が出ました!」。1月28日夕刻、道庁本館6階・保健福祉部に一瞬、緊張が走った。国立感染症研究所(東京)からの一報を受け、同部技監の竹内徳男(59)=現・道立衛生研究所所長=は心の中でつぶやいた。「とうとう出たか」。だが、すぐに冷静さを取り戻した。感染者が、中国・武漢市からの観光客だったからだ。

 武漢は新型コロナの世界的感染源と疑われる地域。「行動歴は分かっている。濃厚接触しない限り、感染拡大はない。慎重に対応すれば大丈夫だ」。自身に言い聞かせた。

 東京・霞が関の厚生労働省。奈良県のバス運転手の男性が感染し、日本人初の感染判明に揺れていた。そのさなか、道庁は同省との調整に追われた。「道内初の感染者をどう発表するか。非常に慌ただしかった」(道庁幹部)。

 午後7時45分、報道発表。「とうとう出たか」。道庁記者クラブにはそんな声が漏れた。

 午後9時、第1回北海道感染症危機管理対策本部会議。道庁3階・テレビ会議室に幹部ら約40人が顔をそろえた。冒頭、知事の鈴木直道(39)が言った。「正確な情報を分かりやすく提供し、不安の解消を図る」。その表情に、焦りはない。

 翌29日、2030年冬季オリンピック・パラリンピックの国内候補地が札幌市に決まった。市長の秋元克広(64)は「東京オリンピックの成功も含め、大会招致に対する機運醸成にしっかり取り組んでいきたい」と語った。

 東京五輪は7月24日に開幕し、8月6~9日には市内でマラソン・競歩が行われる予定だった。この時、国内の感染者は累計7人。五輪延期を危惧するほどの切迫感はなかった。だが、懸念は徐々に広がり始める。

 「道内でコロナの感染が始まった。会長、市立病院だけでは、どうにもならない。ご協力いただけないか」。31日、道北医療の中核をなす旭川市の副市長、表憲章(おもて・のりあき)(71)は市医師会長の山下裕久(75)に電話で助けを求めた。山下…

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