医療プレミア特集

北海道コロナルポ(中) 独自の宣言で拡大抑止

医療プレミア編集部
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緊急事態宣言の効果を説明する北海道の鈴木直道知事=道庁で2020年3月18日、澤俊太郎撮影
緊急事態宣言の効果を説明する北海道の鈴木直道知事=道庁で2020年3月18日、澤俊太郎撮影

<上のあらすじ>2月14日、道内在住者に初の感染が確認され激震が走った。「マスクが売ってない」。札幌市の電話は鳴り続けた。1週間後、国内で初めて児童の感染が判明。「休校を広げる必要はない」。「一斉休校は必要」。判断が揺れた末、全国に先駆けた小中学校の一斉休校に踏み切った。時を同じくして、約700人が来場した展示会で道内初となる集団感染が確認され、事態は混迷を深めていた。

 2月27日午後1時過ぎ、中札内村の村長、森田匡彦(53)に一本の電話が入った。十勝総合振興局(帯広市)の局長、三井真(58)=現・道会計管理者兼出納局長=からだった。振興局長から直接電話が来ることはまずない。森田はただならぬ空気を感じながら三井の言葉に耳を傾けた。「村立保育園の園児が陽性と判明しました」

 日高山脈のふもとに農場が広がる人口約3800人の小さな村。そんな村が十勝地方で初の感染地域となった。

 森田が真っ先に考えたのは、村の混乱を避けることだった。道庁は「10歳未満 十勝総合振興局管内」と発表するはずだ。小学生なのか、未就学児なのか分からない。「混乱が広がるだけだ」。園名の公表を決断した。

 職員は、感染した園児の保護者に電話し、園名公表に理解を求めた。道庁にも公表への了解を取り付けた。ただし、「知事が夕方の記者会見で発表した後に」との条件が付けられた。

 総務課長の川尻年和(51)が振り返る。「園の消毒や閉鎖など、その後の対応を混乱なく進めるために園名を示す記者会見が必要だった」。同日、森田は会見で保育園名を挙げて園児感染を明らかにした。だが、プライバシー保護の観点から年齢などは明かさず、行動履歴なども調査中として答えなかった。

 一方で、翌日の保育園の消毒開始時間は詳細に説明した。現場で取材した記者はこう振り返る。「多くの報道陣が駆けつけたが、村側の段取りがよく、混乱することなく取材が進んだ」

 「会見設定の経緯など、うちで感染者が確認された際の参考にしたい」。村には道内の自治体から問い合わせが相次いだ。それもそのはずだった。同日の新規感染者は15人と初めて2桁となり、不安が広まっていた。

 このころ、政府の専門家会議メンバーが道庁サイドに重要な助言をしていた。「札幌以外の遠隔地に患者が多い。この1、2週間で人の接触を控える積極的対応を取らなければ道全体に感染が拡大しかねない」

 同日午後4時半からの記者会見。知事の鈴木直道(39)は、…

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