理由を探る認知症ケア

どうしてお風呂が嫌だったのか

ペホス・認知症ケア・コミュニケーション講師
  • 文字
  • 印刷
 
 

 Jさん(80代・男性)は、地元の主要産業である鉄鋼関係の工場で働いてきました。お父様を早くに亡くされていたので、一家の大黒柱として真面目に働き、20代半ばで結婚してからも、母や妹の面倒もみてきました。

 そんなJさんが、介護サービスを利用されるようになったのは、1人暮らしで薬が飲めていなかったり、ゴミ出しの日を間違えたりしていたことが気になった息子さんからの相談がきっかけでした。

 かかりつけの先生に、自宅での様子を伝えたところ、何かしらの認知症があるかもしれないと検査をしてくださいました。その結果、軽度のアルツハイマー型認知症との診断がつき、週2回、ゴミ出しの日にヘルパーさんに来てもらうことにしました。

 ヘルパーさんに手伝ってもらえるようになってからは、ゴミ出しの心配もなくなり、「お薬カレンダー」を使うようになってからは、お薬の飲み忘れもなくなり、体調よく、以前と変わらない生活を送れるようになりました。

 そこで、「もっと生きがいのある時間をもってもらいたい」と願っていた息子さんの意向を受けたケアマネジャーは、Jさんに「どんなことをしている時が楽しいですか?」と尋ねました。すると、「いろんな人としゃべっている時やな」とおっしゃっていたので、デイサービスに通うようになりました。

 そこは大規模な事業者で、畑作業、マージャン、脳トレ、おしゃべり等、一人一人がやりたいことを自分で選んで過ごせるデイサービスでした。そのため、自然と気の合う仲間と過ごす時間が増えていき、Jさんも楽しみにして通っていました。

 Jさんは、畑作業や送迎車の洗車等、体を使う作業をしてからお風呂に入…

この記事は有料記事です。

残り1627文字(全文2317文字)

ペホス

認知症ケア・コミュニケーション講師

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケア・コミュニケーション講師」「認知症ケア・スーパーバイザー」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。アプロクリエイト代表。