
「私をかかりつけ医にしている患者さんが2月末に来たのを最後に、ずっとクリニックに来なかった。先週『体調が悪い』と言って久しぶりに来た。6月以降、ずっとよくなかったそうで『どうしてそんなに、来ないで我慢していたのか』と尋ねると『コロナが怖かった』と涙ぐんでいた」。米国マサチューセッツ州ボストン郊外のクリニックで家庭医をしている友人が8月のはじめ、こう嘆きました。
2020年3月15日、マサチューセッツ州は、州内のすべての病院と外来手術センターに「緊急ではない医療を直ちに延期またはキャンセルするように」と指示しました。医療従事者を新型コロナウイルスへの対応に集中させ、マスクなど個人用防護具の不足を防ぐのが目的でした。同じころ米政府は、マンモグラム(乳がんの検査に使う乳房のエックス線検査)や大腸内視鏡検査(大腸のがんやポリープを調べる検査)など日常的な医療を…
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大西睦子
内科医
おおにし・むつこ 内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に、「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側」(ダイヤモンド社)、「『カロリーゼロ』はかえって太る!」(講談社+α新書)、「健康でいたければ『それ』は食べるな」(朝日新聞出版)。