心の天気図

長い闘いを知る

佐々木 司・東京大学教授・精神科医
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 心の病気と同じく体の病気でも、再発や悪化を繰り返し、数十年の長きに及ぶ病気が少なくない。安倍晋三前首相が潰瘍性大腸炎の悪化を理由に、2度目の辞任をしたことは記憶に新しい。だが、こういう病気の悪化は、はた目には分かりにくく、「まさか」と思った人も多いかもしれない。

 安倍前首相が潰瘍性大腸炎を発症したのは17歳とのことだが、そのように若い頃から経過が数十年にわたる病気は、潰瘍性大腸炎だけではない。慢性糸球体腎炎などの腎臓病、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病(こうげんびょう)、糖尿病の一部(特に1型糖尿病)など実に多くの病気がある。10代、20代での発病が多いようだが、1型糖尿病のように、もっと小さい頃からの発病がみられる病気もある。

 これらの病気に共通する特徴の一つは、骨折やけがと違って、周りからはなかなか病気と分からないことである。病気と分かるには本人に話してもらう必要があるが、つらい病気のことを自分から積極的に話したくないという人も少なくない。悪化のために仕事や学校を休むといったことがなければ、周りは知らないままということが実際には多い。

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佐々木 司

東京大学教授・精神科医

東京大学医学部医学科卒。東大病院、財団法人神経研究所晴和病院での勤務を経て、トロント大学クラーク精神医学研究所に留学。帝京大学医学部講師などを勤め、2008年に東京大教授。生活習慣や環境的諸要因と「こころと体」の健康との関連の解明、学校精神保健教育プログラム開発などを進め、英文国際誌を中心に成果を発表している。日本不安症学会理事長、日本学校保健学会常任理事。一般向け著書としては「その習慣を変えれば『うつ』は良くなる!」、共著に「精神科医と養護教諭がホンネで語る 思春期の精神疾患」