Dr.中川のがんのひみつ

日本の歴史を変えた? がん

中川 恵一・東京大医学部付属病院放射線科准教授
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 触ってみると分かりますが、がんは岩のように硬い塊です。がん細胞は、分裂速度が非常に速い(といっても、たった一つのがん細胞が診断可能な1センチ大に成長するまでには、20年という時間がかかります)ため、細胞の密度が高くなるからです。

 がんを英語で、カニやカニ座を意味するCancer(キャンサー)と呼ぶのもがんが硬いからで、カニといっても、毛ガニではなく、ごつごつとしたタラバガニのイメージです。

 医学の父と呼ばれる、古代ギリシャの名医ヒポクラテスが、進行した乳がんがカニの甲羅のように硬いことから、「カルキノス(カニ)」と名付けたことに由来します。日本初のがん専門の研究機関である公益財団法人がん研究会(1908年創立)もカニをシンボルマークとして使っています。

 江戸時代には「乳がん」を「乳岩」と書くこともありました。四谷怪談の「お岩さん」も、ほおの奥にできる上顎(じょうがく)がんだったと思われます。診断法も治療手段もなかったためほおの皮膚にまで岩のようながんが顔を出してしまったのでしょう。

 1895年、レントゲン博士がエックス線を発見し、体の内部を観察できるようになりました。それまでは、肺がんや胃がんといった病名は存在せず、がんといえば、洋の東西を問わず、見て触れること…

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中川 恵一

東京大医学部付属病院放射線科准教授

1985年東京大医学部卒。スイス Paul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、同大医学部付属病院放射線科助手などを経て、2002年から同大病院放射線科准教授。03年からは同大病院緩和ケア診療部長も兼任している。がん対策推進協議会の委員や、厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」議長、がん教育検討委員会の委員などを務めた。著書に「ドクター中川の〝がんを知る〟」(毎日新聞出版)、「がん専門医が、がんになって分かった大切なこと」(海竜社)、「知っておきたい『がん講座』 リスクを減らす行動学」(日本経済新聞出版社)などがある。