知ってほしい「認知症の大事な話」

アルツハイマーの薬 よく効く患者は40人に1人

小田陽彦・ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長
  • 文字
  • 印刷
 
 

 今回は抗認知症薬について取り上げます。抗認知症薬は、認知症の中でも「アルツハイマー型認知症」の治療のために開発された薬です。後になって「レビー小体型認知症」にも効くことが分かりました。しかしこの連載の1回目で取り上げた患者さんは、抗認知症薬を処方されたものの、「アルツハイマー型」でも「レビー小体型」でもなく別のタイプの認知症だったため、何の効果も得られず副作用だけが出てひどい目にあいました。すなわち抗認知症薬は、薬の名前から受ける印象とは違って「すべての認知症に効く薬」ではなく、「どのタイプの認知症か」という診断が合っていないと効きません。また、仮に診断が合っていたとしても薬の効果には個人差が大きく、40人に1人くらいの割合でとても効く人もいるのですが、たいていの場合効果は実感できません。つまり、抗認知症薬は効かないか、あまり効かないかです。ゆえに、使っても使わなくてもどちらでもいいですが、副作用が疑われた場合は直ちに中止すべきです。

 抗認知症薬は大きく「コリンエステラーゼ阻害薬」と「NMDA(N-methyl-D-aspartic acid)受容体拮抗(きっこう)薬」に分類されます。二つともややこしい名前ですが、名前の意味は後から説明します。

 コリンエステラーゼ阻害薬には「ドネペジル」「ガランタミン」「リバスチグミン」の3剤があります。NMDA受容体拮抗薬は「メマンチン」の1剤だけです。いずれもアルツハイマー型認知症に対する治療薬として開発されました。ただし、ドネペジルだけは、レビー小体型認知症に対しても用いられることがあります。

この記事は有料記事です。

残り5086文字(全文5764文字)

小田陽彦

ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長

おだ・はるひこ 1977年、兵庫県西宮市出身。兵庫県立ひょうごこころの医療センター精神科医師。神戸大学医学部卒。医学博士。神戸大学医学部精神科助教、兵庫県立姫路循環器病センター等を経て2017年4月より現職。日本精神神経学会専門医・指導医。日本老年精神医学会専門医・指導医・評議員。著書に「科学的認知症診療」(シーニュ社、2018)