理由を探る認知症ケア

Tさんが見つめていた景色

ペホス・認知症ケア・コミュニケーション講師
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姉の変化にいち早く気づいた妹

 Tさん(70代・女性)は、高校卒業後、地元の役所に就職し、定年まで働き続けてきました。何度かお見合いはしたものの結婚はしないまま、10年前に両親を亡くすまで家族と暮らしていました。

 1人暮らしになってからは、近所の文化教室でやっていた詩吟教室に通うようになり、同じ教室に通う人に誘われてハイキングのグループにも参加。交友関係も広がり、毎日を楽しく過ごしていました。

 また、Tさんには妹が1人いて、妹家族とも月1回は一緒に食事をするなど、関係は良好でした。ところが、毎月、Tさんと会う妹さんは、Tさんが同じ話を繰り返していたり、食事会の日を何度も確認したりすることが続いていたので、心配になって自宅を訪ねました。すると、いつもは奇麗に片付けられている部屋が、服も脱ぎっぱなしになっていたりして雑然としていたので、「何かおかしい」と思い、Tさんは受診することになりました。

「認知症」との診断に戸惑うTさん

 受診の結果、「初期のアルツハイマー型認知症」との診断を伝えられました。妹さんは、「やっぱりそうだったか」となんだかホッとした気持ちと、「これからどうなるんだろう」という不安が同時に押し寄せてきたと話していました。

 一方、診断直後のTさんは、「どうしてわたしが……」とショックを受けておられたようです。ただ、医師からは「いままで続けてきたことをやめちゃダメですよ。詩吟もハイキングも続けて、健康に過ごせば、病気の進行はゆっくりになりますから。一緒に一つずつ前向きに進んでいきましょう」と言われていました。そのため、不安な気持ちは消えないまでも…

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ペホス

認知症ケア・コミュニケーション講師

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケア・コミュニケーション講師」「認知症ケア・スーパーバイザー」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。アプロクリエイト代表。