健康を決めるチカラ

「健康のためになる行動」とは

中山 和弘・聖路加国際大大学院看護学研究科看護情報学分野教授
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 新型コロナウイルスの影響で、病気やそれを疑う症状があっても、感染への不安などから医療機関での受診を控える傾向にあるようです。子どもの虫歯が増えているというニュースもありました。健康のために適切な行動を判断するのは、なかなか難しいものです(そういう私もそうです)。

 公衆衛生学では、「健康のためになる行動」をしてもらうため、その行動を説明する理論があります。国際的によく知られているのは「ヘルス・ビリーフ・モデル」と呼ばれるものです。これは、個人の「信念」や「思い」から行動について説明を試みるものです。健康教育や患者教育をするのに不可欠な、基本的理論です。

 いわゆる「メタボ健診」が始まるころ、出版社などから「医療者の中には行動に関する理論を知らず、保健指導に自信がない人が多いので、講演をお願いします。教科書も書いてください」と連絡がありました。私がウェブサイトでそれらの理論を簡単に紹介していたためです。しかし、日本では具体的にどのような指導をすれば効果があるのか、研究がまだまだ不十分で、「実践する根拠がない中、それは難しい」とお断りしました。

 当時、メタボ健診の理論的・実践的根拠を厚生労働省のサイトで探しましたが、十分に検討されているとは思えない印象でした。先日、京都大の福間真悟・特定准教授らによる「メタボ健診は効果が薄い」という研究結果が広くニュースになりましたが、そのことも一因なのだろうと思いました。

 そこで、ヘルス・ビリーフ・モデルを改めて紹介してみたいと思…

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中山 和弘

聖路加国際大大学院看護学研究科看護情報学分野教授

1985年に東京大医学部保健学科を卒業し、90年に同大大学院医学系研究科保健学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、愛知県立看護大助教授などを経て、2004年から聖路加国際大大学院看護学研究科看護情報学分野教授。適切な情報に基づく意思決定や行動をケアする看護情報学、保健医療社会学が専門。ヘルスリテラシー、意思決定支援、ヘルスコミュニケーションやそのサポートネットワークなどについて研究している。ウェブサイト「健康を決める力」(http://www.healthliteracy.jp/)を運営。