
みなさん、毎日、歯みがきをされると思います。一日何回されますか? 2回から3回の人が多いかと思います。
では、災害時に持ちだす避難バッグに、歯ブラシを入れていますか? また、毎日持ち歩いているバッグに、入っていますか? 歯間ブラシやデンタルフロスなど、普段から使っているものも準備していますか?
「そこまでしていない」「それよりも災害時には優先するものがある」「歯みがきは数日しなくても死にはしない」と思われる方もいらっしゃるでしょう
しかし、災害時の歯みがき、いわゆる口腔(こうくう)ケアは、命に関わるかもしれないのです。
災害による直接死と関連死
直接死とは、「建物に押しつぶされた」「水に流された」など、災害による直接の要因により犠牲になることをいいます。それに対して、関連死とは災害時には助かったものの、避難生活などの中で、災害に関係する要因にて体調を崩して命を落とすことをいいます。2016年4月に発生した熊本地震では、亡くなった方々の8割近くは災害関連死であるといわれており、その原因として多かったのは、呼吸器疾患と循環器疾患でした。1)
災害関連死における呼吸器疾患は、1995年の阪神淡路大震災以降、多くの災害での災害関連死における2割から3割を占めており、災害時の健康管理の最重要課題のひとつとなっています。2)
災害時の誤嚥性肺炎はなぜ起こる?
誤嚥(ごえん)とは、食べ物や飲み物が食道を通って胃に飲みこまれるのではなく、気管を通って肺に入っていってしまう「飲み込み間違い」のことを言います。食事中にむせて、誤嚥しかかった食べ物を咳で出した経験は、誰しもあるでしょう。口腔ケアと誤嚥性肺炎との関係、つまり、「口腔ケアをきちんとすると、肺炎になる人が減り、肺炎で亡くなる人も減る」ということがわかってきたのは、00年ごろからです。3)
つまり、口腔ケアをできていないお口の中や、唾液が汚れて細菌が繁殖している状態で誤嚥をすることは、細菌による誤嚥性肺炎を起…
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医療プレミア編集部
毎日新聞医療プレミア編集部は、国内外の医師、研究者、ジャーナリストとのネットワークを生かし、日々の生活に役立ち、知的好奇心を刺激する医療・健康情報をお届けします。
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