理由を探る認知症ケア

Yさんが急に怒り出したきっかけとは

ペホス・認知症ケア・コミュニケーション講師
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働き者で愛妻家のYさん

 今回の主人公、Yさん(80代・男性)は、地元の高校の先生でした。口調が穏やかな生徒から人気のある先生で、「どの学校でも慕われる」として知られていました。風紀が乱れていた学校に赴任した時、当初は生徒から試されるようないたずらをされたといいます。それでも感情的に怒鳴ることがないYさんに生徒も信頼を寄せるようになったという逸話の持ち主でもあります。

 Yさんは幼なじみの女性と結婚。3人の子どもを育てて、子どもが家庭を持った頃に仕事を辞めました。仕事人間だったYさん。「仕事を辞めたら、体も頭も動かしていないとダメだ」と、ハイキングや海釣りに出かけて楽しく過ごしていました。

妻が緊急入院……

 そんな折、五つ年下の妻が買い物に行く途中で転倒し、太ももの骨を折って入院することになりました。Yさんは、周囲の心配をよそに、3km離れた病院まで自転車でお見舞いに行っていました。

 ところが、Yさんはその帰り道に自転車で転倒し、医師から自転車の使用を控えるように助言されました。それを機に、お見舞いに通う頻度が減り、家で過ごすことが増えると、徐々に認知症のような症状が出てきました。そして、妻が退院した時には、今までできていたこと(自転車に乗る、買い物に行くなど)がすっかりできなくなっていたそうです。

 妻は「いろんなことができていたのに、いっぺんに悪くなってしまって、とてもショック」と悲しんでおられました。そして、妻の退院を機に、Yさんも「要介護1」の認定を受けて、デイサービスに通い始めることとなったのです。

Yさん、再び人気者に

 家に…

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ペホス

認知症ケア・コミュニケーション講師

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケア・コミュニケーション講師」「認知症ケア・スーパーバイザー」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。アプロクリエイト代表。