
今回は個人的な話から始めます。去る11月22~23日、わずか1泊2日ではありますが連休を利用して私の家族は沖縄旅行を計画していました。この時期に医療者が旅行などけしからん、という声があるのを承知で決行を決めたのは、膵臓(すいぞう)がん術後の義父に沖縄の自然を味わってほしかったからです。義父はステージ4b(がんが全身に転移し最も進行した状態)を宣告されながら奇跡的に手術を受けることができたものの、いつ再発しないとも限りません。再発すれば再度の手術は難しく、死へのカウントダウンが始まることになります。そこで、義父、義母、私の妻と私で、いわば「義父にとって最後になるかもしれない旅行」を計画したのです。
この記事は有料記事です。
残り3396文字(全文3698文字)
投稿にはログインが必要です。
谷口恭
太融寺町谷口医院院長
たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト