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「10代から健康教育を」 中川恵一医師に聞く

医療プレミア編集部
がん検診などへのコロナ禍の影響について語る東大病院の中川恵一放射線治療部門長=藤井太郎撮影
がん検診などへのコロナ禍の影響について語る東大病院の中川恵一放射線治療部門長=藤井太郎撮影

 新型コロナウイルスの感染者が世界各国で再び増加している。社会の関心はコロナに集中し、過剰に感染を恐れて引きこもったり、必要な検診を受けなかったりする事態が起きている。この状況は、放射線被ばくに関心が集中した東京電力福島第1原発事故に通じるという声も多い。延べ3万人のがん患者の治療にあたり、福島県で支援活動を続けている東京大病院放射線治療部門長の中川恵一・准教授には今の日本がどう映るのか。【聞き手 くらし医療部・田中泰義】

進行がん患者の増加が懸念

 医師として治療する上で心がけているのは、患者さんが重症化するのか、死亡するのか、後遺症が残るのかという見極めです。感染者が増えれば重症者も増えていきますが、新型コロナの感染者の8割は軽症もしくは症状なしです。しかも、他に感染させる人も一握りということが分かってきました。日々の感染数だけで一喜一憂するのは健全ではありません。私の好きな坂本冬美の唄に「いつまで待っても来ぬ人と 死んだひととは おなじこと」という一節がありますが、感染しても症状をまったく出さなければ、感染したといえないのと同じではないかと感じます。クラスター(感染者集団)、3密回避など必要な対策は実施すべきですが、すべてを抑制するというのはおかしなことです。

リスクが見えない日本人

 東大病院では放射線治療を受ける人は増えていますが、がんの検診や治療を受ける人が減っています。日本対がん協会は平年より検診数が3割減り、4000人のがん患者が見落とされる可能性があると予測しています。特に胃がん検診者が減っているようです。胃カメラは、医師と受診者の距離が近いからもしれません。これは、受診者だけの問題ではなく、感染を恐れて検査を受け付けない医師がいるから驚きです。実際、胃がんの手術件数が大きく減っています。その分、来年以降、進行胃がんが増えることになります。がん以外でも、持病があったり、体調が…

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