賢い患者

30年で大きく変化「患者の意識と医療者の姿勢」

山口育子・認定NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML」理事長
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 医療と患者の関係は、この30年ほどでかなり大きく変わりました。今回は、私の個人的な体験と、私たち「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」に寄せられた6万件を超える医療相談を振り返り、患者側と医療側、それぞれの意識や姿勢の変遷をご紹介したいと思います。

25歳で卵巣がんの手術

 私が医療と向き合うようになった大きなきっかけは、25歳を目前にした1990年9月に卵巣がんを発症したことです。当時は、患者には情報が閉ざされていた時代で、いわゆる“がん告知”も一般的ではありませんでした。私は、卵巣がんの疑いがあると知らされないまま、10センチ大に腫れあがった卵巣を摘出する手術を受けるということで入院しました。しかし、手術前の検査として行われた注腸検査(腸に造影剤を入れて行うエックス線検査)が刺激になったのか、本来の手術予定日を待たずに卵巣がんが破裂し、緊急手術となりました。しかも、破裂したのは日曜日の朝で、麻酔科医となかなか連絡がとれず、麻酔科医が到着するまで6~7時間の待機を余儀なくされました。それによって全身にがんがばらまかれてしまったため、卵巣を摘出しただけでなく、腹腔(ふくくう)内に直接抗がん剤を入れる処置を受け、手術の後は一晩中嘔吐(おうと)が続くという過酷な状態でした。

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山口育子

認定NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML」理事長

やまぐち・いくこ 1965年、大阪市出身。89年大阪教育大卒業。92年秋から「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」のスタッフとして、患者からの医療に関する電話相談を受け、COMLの活動全般の運営に携わってきた。2002年から同専務理事兼事務局長、11年から理事長。著書に「賢い患者」(岩波書店、2018)