物事を覚えたり言葉を使ったり段取りをしたり計算したりする知的な能力のことを「認知機能」といいます。認知症では、この認知機能が脳の病気によって障害されています。つまり認知症には認知機能障害が必ずあります。一方、認知機能障害を基盤として身体的要因、環境的要因、心理的要因などの影響を受けて起こるのが認知症に伴う行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia: BPSD)です。BPSDには興奮、攻撃性、脱抑制(本能を抑制することが不可能なので社会的に不適切な行動に出てしまう症状)、徘徊(はいかい)といった行動面の症状と、不安、うつ、幻覚、妄想といった心理症状(精神症状ということが多いです)があります。認知機能障害とは異なり、BPSDは認知症に必ずあるとは限らず、BPSDがない認知症もあります。今回と次回の2回に分けて、BPSDについて取り上げます。

 まず、BPSDに含まれる症状とその解説は、以下の表のようになります。

この記事は有料記事です。

残り2401文字(全文2846文字)

小田陽彦

ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長

おだ・はるひこ 1977年、兵庫県西宮市出身。兵庫県立ひょうごこころの医療センター精神科医師。神戸大学医学部卒。医学博士。神戸大学医学部精神科助教、兵庫県立姫路循環器病センター等を経て2017年4月より現職。日本精神神経学会専門医・指導医。日本老年精神医学会専門医・指導医・評議員。著書に「科学的認知症診療」(シーニュ社、2018)