健康をつくる栄養学のキホン

生ガキをおいしく食べるための知識

成田崇信・管理栄養士
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 最近、ネット交流サービス(SNS)で、生のカキの安全な食べ方として「細菌の多くは殻に付着しているため、直接口をつけずに箸などで外して食べるとよい」というツイートが話題となりました。食中毒は心配だけれど、生のカキを食べたいという人にとってありがたい「情報」でしたが、そもそもカキの食中毒で問題になるのは細菌ではなく、ノロウイルスであるはずです。そのため、「この予防法はミスリードでは」との指摘が多く聞かれました。

 旬を迎えたマガキが出回るこれからの季節、安全においしく食べるため、食中毒の予防法を検証しました。調べてみると、カキの生食は自己責任では片付けられない、公衆衛生上の問題もあることがわかりました。

カキと食中毒

 今でこそ生ガキの食中毒といえばノロウイルスという認識が広まっていますが、ウイルスによる食中毒が日本の統計に現れたのは1997年のことで、当時は小型球形ウイルスと呼ばれていました。2002年にノロウイルスと命名され、06年の大流行により一般に知られるようになりました。ウイルス以外では、貝毒や腸炎ビブリオによる食中毒が発生しています。近年は食品の衛生的な取り扱いや保存技術の向上もあり、細菌性の食中毒は以前と比べ減少し、食中毒患者の過半数はノロウイルスなどのウイルス性の食中毒が占めるようになっています。

 カキには、食中毒予防の観点から「加熱用」と、定められた基準を満たした「生食用」があります。生食用の基準は地域によって異なる部分はあるものの、指定された海域で養殖し▽清浄な海水で浄化し▽採取後は衛生的な海水で十分に洗浄・殺菌処理をし▽低温を保ったまま運搬――したものを生食用として販売することができます。生食用のカキであれば、腸炎ビブリオなどの細菌性の食中毒のリスクは極めて低いと考えられます。

殻に口を付けない予防法の有効性は?

 「生食用カキ」であれば、細菌による食中毒のリスクは低いため、たとえ殻に多くの細菌が付着していたとしても、箸で殻から外して食べる予防法にはあまり意味がなさそうに思います。腸炎ビブリオは夏場の温かい海水中…

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成田崇信

管理栄養士

なりた・たかのぶ 1975年東京生まれ。社会福祉法人で管理栄養士の仕事をするかたわら、主にブログ「とらねこ日誌」やSNSなどインターネット上で食と健康関連の情報を発信している。栄養学の妥当な知識に基づく食育書「新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK」(内外出版社)を執筆。共著に「各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと」(メタモル出版)、監修として「子どもと野菜をなかよしにする図鑑 すごいぞ! やさいーズ」(オレンジページ)などに携わっている。