医療プレミア特集

新型コロナ「集団免疫獲得の街」を歩く

医療プレミア編集部
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行動制限に違反したパーティーでは市民が密集し、マスク姿もまばらだった=2020年10月31日、ブラジル北部マナウスで山本太一撮影
行動制限に違反したパーティーでは市民が密集し、マスク姿もまばらだった=2020年10月31日、ブラジル北部マナウスで山本太一撮影

 新型コロナウイルスの死者数が世界2位(2020年12月現在)のブラジル。北部のマナウスでは住民の抗体保有率が既に6割を超えたとみられている。流行が終息に向かう「集団免疫」を獲得したとも考えられたアマゾン川中流の都市を訪ねた。【ブラジル北部マナウスで外信部・山本太一、写真も】

 真夜中のアマゾン川沿いのビーチに近いイベント会場に、保健当局や警察などで作る約40人のパトロール隊が踏み込むと、若い男女を中心に200人以上がアルコール飲料を片手に「密集」し、パーティーを楽しんでいた。感染が広がった3月中旬に課された行動制限では、「3密(密集・密着・密接)」を避けるためにパーティーは禁止されており、公共の場所でのマスク着用も義務づけられている。しかし記者のマスクが汗まみれになるほどの高温多湿の気候も影響して、ほとんどの参加者が着けていなかった。

大統領をまねて「コロナはちょっとした風邪」

 20~30代の男性4人組に話を聞くと、3人はすでに感染したが軽症で済んだと返答。ブラジルでは感染予防策を軽視するボルソナロ大統領が、高齢者らリスクのある人たちは自宅待機すべきだが、若者は普段通りに生活すべきだと訴えてきた。この主張に賛同するという4人は「コロナはちょっとした風邪に過ぎない」と大統領の発言をまねていた。

 同じ会場にいた20歳の女性2人組は「このお酒を飲みきるまで絶対に帰らない」と意地を張り、「先週末も別のパーティーで(パトロール隊に)踏み込まれた。なぜ、パーティーだけを狙い撃ちにするのか」と摘発に反発している。

 人口220万のマナウスでは2020年3月中旬に感染爆発が発生した後、4月に1070人、5月には970人が亡くなり、死者数は通常の最大5倍に達した。人口10万人当たりの死者数は123人で、ブラジル全体の74人を大きく上回る。

「抗体保有率64.8%」

 サンパウロ大や英オックスフォード大などの研究チームは、20年2月から8月まで現地住民から採取した約6300件の血液サンプルを分析し、ウイルスの抗体の有無を調べ、各月の抗体保有率の推移を算出した。ウイルスによって集団免疫を獲得できる目安は異なり、新型コロナの場合は抗体保有率が60%を超すと目安になると考えられている。

 研究チームが同年9月に発表した論文では、調査対象者の抗体保有率が6月に64.8%になると死者は259人まで減り、感染拡大に歯止めがかかる傾向が見られた。論文は「集団免疫が流行の規模を決定する上で重要な役割を果たしたことを示唆している」として、流行が下火になることに影響を及ぼしたと結論づけた。感染者数がブラジルの国内自治体で最も多いサンパウロ市でも抗体保有率は22.4%にとどまり、マナウスの数値の高さが目を引く。

市民の多数は「集団免疫」を知らず

 ただしマナウス…

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